このページの要点
- 再委託するなら、再委託先に同等の義務を課し、その行為について責任を負うと書く。
- 一時的な人員不足への応援や承認済みの協力会社は、個別の承諾を要しない例外にする。
- 住宅宿泊管理業者は管理業務の全部の再委託を禁止されている(住宅宿泊事業法35条)。清掃会社は清掃という一部を受けることを明確にする。
- 依頼主との契約とスタッフとの契約で、情報を渡せる相手の定義をつなげる。
民泊清掃は、多層構造の一部
民泊清掃の契約は、多くの場合、次のような多層構造の一部になっています。オーナー(住宅宿泊事業者)から住宅宿泊管理業者・運営代行へ、そこから清掃会社へ、さらに清掃スタッフ(個人事業主・小規模な法人)へ。清掃会社の関連会社の担当者が、現場の連絡・調整に関わることもあります。
清掃会社が決めておく4つのこと
- 自社が下に出してよいか再委託の可否と条件
- 上から出してくる相手の再委託運営代行や管理業者が自社に出すことの扱い
- 情報をどこまで下に渡せるか物件・鍵・ゲストの情報
- 誰が誰に責任を負うか再委託先・従事者の行為の責任
自社が下に出すとき
家主不在型の民泊の清掃を受ける契約では、依頼者の回答で、清掃会社は依頼主の事前の承諾なく再委託でき、自社の従業員のほか業務委託の従事者を使える、としました。再委託先と従事者には同等の義務を負わせ、その行為は自己の行為として責任を負います。依頼主は従事者に直接指揮命令しない、とも定めています(清掃スタッフとの業務委託)。ヒヤリングでは、依頼者の過去の契約にあった「依頼主は原則として他の清掃業者に委託しない(清掃会社が受託できないと回答した場合などは例外)」という条の採否も確認し、採らないことにしました。
事務所の改訂例 ホテル清掃の再委託
承諾の手続
欠勤・急な退職・繁忙期・感染症などで急に人員を補充する必要がある清掃の実態に照らすと、毎回の承諾は現実的ではありません。「地位の譲渡の禁止」が再委託を妨げないことも明記し、両方の条の関係を整理しました。
ご相談と回答 自社のスタッフだけで
- 第三者に委託させず、自社のスタッフだけで対応させたいのですが。
- 「自己の責任において自社のスタッフにより遂行し、事前の書面の承諾がある場合を除き再委託しない」という再委託の禁止の条で対応できます、と回答しました。
新しく清掃の会社を立ち上げる案件のスタッフとの契約では、スタッフは発注者の事前の書面の承諾がない限り再委託できず、承諾を得て再委託するときは秘密保持の義務を含む同等の義務を負わせ、再委託先の行為を自己の行為とみなして責任を負う、としました。
上から受けるとき:運営代行・管理業者の下に入る
運営代行の契約を施設の側から依頼を受けて改訂した案件では、運営代行が業務を再委託するには事前の書面の承諾が必要だが、清掃・簡易な修繕・設備の点検・緊急の対応などの定型的・日常的な業務は包括的に承諾したものとみなす、としました。その場合も、求めに応じて再委託先の名称・業務の内容・期間を通知し、施設の側が確認できます。運営代行は再委託先に同等の秘密保持の義務を課し、再委託先の行為について責任を負い、反社会的勢力の排除も再委託先に及ぼします。
運営代行の下に入るときに想定しておくこと
宿泊施設の運営会社が示した原案を受託者の側でレビューした案件では、依頼主は原則として他の清掃業者に委託しないが、清掃会社が受託できないと回答した場合、期限までに終わらないおそれがある場合、災害・感染症・人員不足などで手配が難しい場合は、事前に連絡して(緊急のときは事後)第三者に委託でき、それは契約違反に当たらず清掃会社は違約金などを請求しない、という条がありました。受託者側のレビューでは、清掃ができないことが営業の停止に直結する民泊では業界で一般的な条と評価しています。
住宅宿泊管理業者から清掃だけを受ける
住宅宿泊管理業者は、委託された管理業務の全部を他の者に再委託することを禁止されていますが(住宅宿泊事業法35条)、一部(清掃)を清掃会社に出すことは条文上禁止されていません。施行要領も、住宅宿泊管理業者から再委託を受けて清掃など管理業務の一部の事実行為を行う場合は住宅宿泊管理業に当たらないとしています。管理受託契約に再委託についての定めがあることが前提になるので、上位の契約でその点を確かめておきます。清掃会社は、自社が受けるのが「清掃」という一部であることを、契約書の範囲の条で明確にしておきます(管理業との境界)。
情報を下に渡す範囲
新しく清掃の会社を立ち上げる案件では、依頼者から「関係者を網羅的に把握できるか」というご相談を受け、オーナー向けの利用申込書と、スタッフとの契約の両方で、情報を渡せる相手を定義し直しました。
| 契約 | 定義 |
|---|---|
| 利用申込書(清掃会社が受注者) | 秘密情報を開示できる相手として「関連会社」と「清掃スタッフ」を定め、清掃スタッフを「雇用・業務委託その他の契約の形態を問わず清掃会社のために業務を行う者」と定義し、清掃会社の役員・使用人、関連会社の役員・使用人、関連会社が契約している者を含めた |
| スタッフとの契約(清掃会社が発注者) | 発注者が秘密情報を開示できる「関係者」(関連会社の役員・使用人と契約先、他の清掃スタッフ)を新たに定義した |
提案書では、2つの契約は情報の流れとして連続しているため、開示先の定義を条文の上でつなげ、物件の情報とゲストの情報をスタッフの秘密保持の対象に含め、再委託を認める場合は義務を承継させる、と整理しました。ゲストの個人情報が含まれる場合は、個人情報保護法の委託先の監督(個人情報保護法25条)も関係します。
再委託と支払期日の特例
オーナーから受けた清掃を個人のスタッフに再委託する清掃会社が、特定業務委託事業者に当たる場合、再委託である旨・元の委託者・元の委託の支払期日などをスタッフに明示したときは、スタッフへの支払期日を元の委託の支払期日から30日以内とできる特例があります(フリーランス法4条3項)。多層構造の中で、上から代金が入る前にスタッフへの支払期日が来てしまう、という資金繰りの問題への手当てです。
上の契約と下の契約をつなぐ言葉
新しく清掃の会社を立ち上げる案件では、清掃会社が受注者になる利用申込書と、発注者になるスタッフとの契約の両方で、業務の範囲を「清掃業務に直接付随する軽微な作業(電球の交換その他これに類する軽微な作業に限る)」と同じ言葉で定め、これを超える修繕・工事はどちらの契約でも別の契約としました。上の契約で受けていない作業を下に出してしまう、あるいはスタッフが上の契約の範囲を超える軽微な修繕を現場の判断でしてしまう、というずれを防ぐためです。提案書でも、2つの契約は当事者の立場が逆になるので「一本の型」を使い回さず個別に設計する、と方針を示していました(業務範囲)。
同じ案件の利用申込書では、「清掃スタッフ」の定義を、雇用の契約も含めて網羅する形に広げました。その際の設計上の留意点です。「清掃会社及び関連会社の役員及び使用人」と書くと、関連会社の役員・使用人だけを指し、清掃会社自身の役員・使用人が含まれないとも読める、という係り受けの問題があります。そこで「清掃会社の役員及び使用人、関連会社の役員及び使用人、並びに関連会社が業務委託契約その他の契約を締結している者」と、主体ごとに項目を分けて書きました。関連会社の定義も、依頼者のコメントで社名だけに簡略化しています。開示先の定義が読み方によって狭くなると、自社の役員・従業員への共有が契約違反と読めてしまいます。
スタッフとの契約では、「関係者」の定義に、関連会社の役員・使用人と契約先に加えて、清掃会社が他の個人事業主・法人と結ぶ業務委託の契約に基づき業務を行う者とその法人の役員・使用人を入れ、業務の遂行に必要な範囲で開示でき、同等の秘密保持の義務を守らせる、としました。スタッフとの契約の中で使う「清掃スタッフ」の語も、利用申込書の定義に頼らず、スタッフとの契約自体で定義しています。暗証番号を誰に伝えてよいかを再委託の条と連動させた例は、鍵・キーボックスのページで紹介しています。
上位の契約の承諾と、施設からの交代の求め
建物管理の協力会社の契約のレビューでは、受注者に個人データを扱わせる場合の委託先の監督として、個人情報保護委員会のガイドラインの記述に沿って、適切な委託先の選定、委託契約の締結、取扱状況の把握を挙げたうえで、発注者自身が元請先の委託先である場合、下への再委託には元請先との契約上の承諾が要るのが通常で、これも確認事項だと指摘しました。民泊の清掃会社が管理業者・運営代行の下で清掃し、さらにスタッフに出す場合も、上位の契約で再委託が承諾されているかを先に確かめます。上位の契約で再委託が禁止されていたのにスタッフに出していた、というのは典型的な失敗です。
ホテル清掃の契約の改訂では、従事者への人事権・指揮命令権は清掃会社に専属し、依頼主は従事者に直接指揮命令しないとしたうえで、従事者の交代の要求は、重大な規律違反、著しい業務の不履行、宿泊客との重大なトラブルなど客観的かつ合理的な事由がある場合に、理由を示して行う、という形にしました。相手方の原案は交代を求める理由に限定がなく、受託者側のレビューで「相性が良くない」などの主観的な理由で交代を求められるおそれを指摘していた点です。
運営会社が替わるとき
同じレビューでは、譲渡禁止の条は双方に同じ義務を課しているが、実際に地位の承継が起きやすいのは運営会社の側(事業譲渡、運営の委託先の変更)なので、その際の扱いを事前に確認すべきだとも指摘しました。
地位の承継の扱い
清掃会社から見ると、運営会社が替わっても同じ条件で続けさせられる条項が示され得ます。逆に、運営会社が替わったら新しい会社から一方的に条件の変更を求められた、という場面もあります。どちらの場合も、承継の前に通知を受け、条件を協議する機会が契約にあるかどうかが分かれ目になります。
運営代行の契約の委託者側の改訂では、秘密保持の存続期間が終了後数年と長めに設定され、再委託先が反社会的勢力に当たったことによる損害は受託者が負う、受託者の従業員・役員・代理人・再委託先の故意・過失(軽い過失を含む)による損害は賠償の対象とする、とされました。清掃会社が運営代行から清掃を受けると、こうした水準がそのまま清掃会社との契約に求められます(管理業との境界)。
よくあるご質問
民泊清掃を別の業者やスタッフに再委託してもよいですか?
依頼主との契約しだいです。事前の承諾が要らない形、承認済みの協力会社や緊急の応援は個別の承諾が要らない形、全面的に禁止する形があります。再委託するなら、同等の義務を課し、その行為の責任を負うことを書きます。
急な欠勤で応援を頼むとき、毎回依頼主の承諾が必要ですか?
契約で、繁忙期・欠勤・急な退職・感染症などによる一時的な人員不足への応援は個別の承諾を要しない、と例外を置いておけば不要です。施設に立ち入る人は事前に通知する、とあわせて書きます。
運営代行会社から清掃を受けるとき、契約書で確認すべき点は?
自社の名称が施設側に通知され得ること、上位の契約と同じ水準の秘密保持・反社会的勢力の排除を求められること、損害賠償の範囲が広く求められ得ること、運営代行が払わない場合の扱いを確認します。
住宅宿泊管理業者から清掃だけを受けても問題ありませんか?
管理業者は管理業務の全部の再委託を禁止されていますが、清掃という一部を出すことは条文上禁止されていません。清掃に限ることを契約の範囲の条で明確にしておきます。
スタッフに物件情報やゲスト情報を渡すとき、何に気をつければよいですか?
依頼主との契約とスタッフとの契約で開示先の定義をつなげ、物件・ゲストの情報をスタッフの秘密保持の対象に含めます。ゲストの個人情報なら、委託先の監督の義務も意識して、渡す範囲を必要な最小限にします。
あわせて読みたい、関連する別のガイド
- SNS運用代行の業務委託契約書に入れるべき条項SNS運用代行の契約ガイド
- 個人情報の第三者提供と、海外のクラウド・SaaSを使うときの整理アプリ・Webサービスの利用規約ガイド
- 協力会社への再委託と改正貨物自動車運送事業法軽貨物・運送と車両の契約書ガイド
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。届出・登録・許可の運用は、所管の行政機関や自治体によって異なることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた民泊・宿泊施設の清掃業務委託契約書、清掃スタッフとの業務委託契約書、利用申込書、ハウスクリーニングの利用規約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。参考: e-Gov法令検索 / 民泊制度ポータルサイト(観光庁) / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)