このページの要点
- 業務を列挙するだけでなく、管理業務・修理や工事・廃棄物の処分・ゲスト対応など含まないものも列挙する。
- エリアごとの○×表を別紙にするなら、本文が優先する旨を書く。
- 電球の交換などの軽微な作業は含め、修繕・工事の規模のものは別の契約にすると明記する。
- 民泊では、設備の異常を見つけたら連絡と被害の拡大を防ぐ一次対応・業者の立会いまで、と範囲を決める。
「やること」だけでなく「やらないこと」も列挙する
民泊清掃の紛争の多くは、「それは頼んでいない」「それも含まれているはず」という範囲の食い違いから始まります。事務所が手がけた契約書に共通するのは、業務を列挙するだけでなく、含まないものも列挙するという書き方です。
家主不在型の民泊の清掃を受ける契約では、業務を、①建物内・敷地内の清掃、②リネン類の交換・洗濯・乾燥、③ごみの分別と所定の範囲の保管、④忘れ物の保管と発送の手続、⑤設備の不具合・水漏れ・宿泊者の申出などが起きたときの所定の範囲の現地対応、⑥付随業務、と並べ、別の条で「含まれないもの」を列挙しました(管理業との境界)。
○×で選んでもらう
清掃会社が個人事業主の清掃業者に委託する案件では、ヒヤリングシートで「客室内の清掃、リネンの交換、ゴミの回収、備品・消耗品の補充、共用部(プールなど)の清掃、駐車場の清掃、鍵の受け渡し・保管などのうち、どこまでを含めるか」を一つずつ尋ねました。依頼者は○×で選び、客室内の清掃(ルームメイク)、屋外の設備の清掃、ごみの収集に限り、備品・消耗品の補充、駐車場の清掃、鍵の受け渡し・管理は含めないと回答しました。改訂では、これを業務の条と「含まない」の条にそのまま反映しています。
作業の範囲の○×の例(民泊清掃のサービス紹介資料を一般化)
| 作業 | 扱い | 補足 |
|---|---|---|
| 玄関・部屋・寝具・キッチン・トイレ・浴室・洗面台の清掃 | ○ | 基本の作業 |
| 室外の清掃(外階段・駐車場) | × | 対象外 |
| トイレ・浴室の換気扇の清掃 | × | 対象外 |
| ゴミの分別 | × | 宿泊者が分別しない場合の扱いは別に決める |
| 建物内の所定のゴミ捨て場へのゴミ捨て | ○ | 施設の外への持ち出しはしない |
| エアコンのフィルターの清掃 | ○ | 高所は対象外 |
| エアコンの分解洗浄 | △ | オプション(別に見積り) |
| 家電の動作の確認 | △ | 一部の機器に限る |
新しく清掃の会社を立ち上げる依頼者のサービス紹介資料は、エリアごとに作業を○(対応)・×(対象外)・△(オプション)で示していました。契約書の本文はこの別紙を引用しつつ、本文が優先する条項で宣伝の文言との衝突を防いでいます。
「軽微な作業」と修繕・工事の線引き
新しく清掃の会社を立ち上げる案件では、依頼者の回答(修繕は電球の交換などの軽微な作業のみ)を受けて、スタッフとの契約と利用申込書の両方で「清掃業務に直接付随する軽微な作業(電球の交換その他これに類する軽微な作業)」を業務に含め、内装の補修、設備の交換、これらに準ずる規模の修繕・工事に当たるときは業務に含まれず、実施の要否・内容・対価はその都度協議して書面で合意した場合に限り別の契約で行う、としました。提案書では、内装の補修などが高額になった場合に建設業の許可が問題になり得ること(請負代金が一定の額に満たない軽微な工事は許可が要らない。建設業法施行令1条の2)も、付随する論点としてお伝えしています。
家主不在型の民泊の契約では、電球の交換その他の簡易な作業は「物品代+簡易な作業の費用」として料金表に置き、修理・交換は専門の業者に依頼する前提で、清掃会社は専門の業者が行うべき作業を自ら行う義務を負わない、と書きました。
設備の異常を見つけたとき:ホテルと民泊で逆になる
同じ「設備の異常を見つけたとき」でも、常駐の管理者がいるホテルと、いない民泊とでは、書き方が逆の方向になります。
事務所の改訂例 ホテル清掃の設備の異常
異常の発見
報告は当然としても、「改善」「対応」まで清掃会社の業務と読める書き方では、修繕の費用や営業の損失まで請求されかねません。
一方、民泊では依頼主がその場にいないことが多いので、清掃会社が一次対応をする前提で範囲を決めます。家主不在型の民泊の契約では、設備の不具合や水漏れなどを見つけたら直ちに連絡したうえで、①止水栓・元栓の閉止やブレーカーの遮断など、被害の拡大を防ぐ現地での一次的な対応、②依頼主が手配した業者の作業への立会い、を行うとしました。宿泊者への対応の窓口は依頼主とし、清掃会社は宿泊者に直接連絡しない(在室のときの必要最小限の応対は妨げない)こと、作業者の安全を優先し、危険があれば一次対応をしないことができ、その責任を負わないことも書いています。
設備の異常を見つけたときの書き方
相手方の原案の「可能な範囲で現地対応」
清掃会社が受託者となった別の案件で、宿泊施設の運営会社から示された原案には、業務の一つに「設備トラブル、水漏れ、利用者からのクレーム等が発生した場合、スタッフが可能な範囲で現地対応」「前記以外の緊急対応は協議」とありました。受託者側のレビューでは、対応の範囲があいまいだと指摘しました。その後、同じ依頼者の別の契約では、現地対応の中身(一次対応と立会い)、宿泊者の窓口、安全を優先する場合の免責を具体的に書いています。
事務所の改訂例 見本の契約からの作り直し
業務の範囲
見本の契約は、そのときの物件の事情で書かれていることが多く、別の物件にはそのまま合いません。
消耗品の補充
誰が用意するかが変われば、業務の範囲も精算の条も変わります(リネン・消耗品)。
回答と設備の台数を、条文と別紙に落とす
清掃会社が発注者として個人事業主に委託する契約では、最初の版は、依頼者の見本の契約と過去の契約を参考に、業務を「建物内・敷地内の清掃」「客室内のリネン類の交換」「ゴミの分別と保管」「忘れ物の保管」「鍵の受け渡しと管理」「付随業務」として起案しました。ヒヤリングの回答を受けて業務の条を全面的に書き換え、含まないものを別の項で明記しています。
説明書では、回答の部立てに沿って「ご回答」と「反映内容」を対照表で示し、変更のない項目にも「確認済み(変更なし)」と書いて、回答が一つも漏れていないことを示しました。業務の範囲は後から「言った・言わない」になりやすいので、どの回答がどの条に入ったかを依頼者と一緒に確かめられる形にしておくことが大切です。
同じ契約では、屋外の設備を括弧書きで具体的に限定して列挙しました。家主不在型の民泊の清掃を受ける契約では、一部の屋外の設備は通常は作業の対象にせず、かび・こけが付いている場合に限って清掃して追加料金とする扱いを料金表に置いています。
ヒヤリングで確かめたこと 設備と作業量
- 屋外の設備、キッチンの設備、洗濯機・乾燥機はありますか。エアコンは何台で、そのうちお掃除機能付きは何台ですか。排気フードやダクトはありますか。チェック方式でお尋ねし、「追加料金の適用条件に関係します」と注記しました。
- 棟数・階数・間取り・定員・ベッド数・浴室とトイレの数、事業所からの片道の距離と所要時間、駐車場の有無、月あたりの想定の清掃回数(繁忙期・閑散期)を教えてください。1回あたりの基本料金の根拠となる作業量を確定させるための質問です。回答は対象施設の表示(別紙)に、建物の規模、定員とベッド数、水回りの数、主な設備、移動の距離・時間、駐車場の有無として書き込みました。
家主不在型の民泊の契約のヒヤリングです。回答の時点で食洗機・洗濯機・エアコンの有無や台数が確定しなかったため、別紙に「甲乙間で確認の上、本別紙に追記する」という確認欄を残しました。
別紙に作業量を書いておくと、間取り・定員・設備・稼働の状況が大きく変わったときに料金の改定を協議する条(料金・追加料金)の比較の基準になります。台数が分からないまま契約して、後からエアコンや食洗機の清掃を通常の料金でと言われる事態も、この確認欄で防げます。
依頼主が用意するものを、業務範囲と表裏で書く
家主不在型の民泊の契約では、業務と表裏の関係で、依頼主が確保すべきものを列挙しました。立入りの手段と作業時間、電気・水道・給湯・空調と清掃の設備が正常に動くこと、建物・設備の安全と危険箇所の是正、駐車場所、ゲストへの「清掃の実施・荷物の取扱い・記録のための撮影」の事前の周知です。到着後にこれらがなく実施できなければ全額の支払とし、感染症のおそれのある汚染、著しい悪臭、害虫・害獣など作業者の健康・安全に危険が及ぶ事情があれば中止でき、責任を負わない、としました。
事務所の改訂例 ホテル清掃の作業環境
安全と作業環境
受託者側のレビューで、依頼主の側の安全への配慮が書かれていない点を指摘し、それを受けて改訂しました。
自社で原案を作るとき、相手から求められる修正
運営代行の契約(施設側からの依頼)では、運営代行の会社が自分で用意した草案を、委託する施設の側でレビューしました。草案は本文・別紙の業務内容・別表の報酬の三部構成で、①本文と別紙が食い違うときは別紙を優先、②別紙にない業務は対象外と読める限定的な列挙、③受託者の側の解除権(委託者の指示が法令違反になるとき、業務の遂行に重大な支障が生じたとき)と、受託者が解除した場合の委託者の賠償の義務、④実費は領収書の提示で請求、という受託者寄りの作りでした。
委託者の側の依頼による改訂では、本文を優先し、別紙にない業務でも性質上当然に含まれるものと合理的な指示の範囲には対応する、別紙の変更は代表者の書面の合意で効力を生じる、とされました。清掃会社が自社の原案で「別紙にないものはやらない」と組んでも、相手からはこの方向の修正が求められることを想定しておきます。
よくあるご質問
民泊清掃の契約書には、どこまで具体的に作業を書けばよいですか?
業務の列挙に加えて、含まないもの(管理業務、修理・工事、廃棄物の処分、ゲスト対応など)も列挙します。エリアごとの○×表を別紙にする方法もあり、その場合は本文が優先する旨を書きます。
サービス紹介資料の作業一覧を、契約書に付けてもよいですか?
付けて構いませんが、宣伝の文言(「修繕も」「運営まるごと」など)が残っていると、契約の範囲と食い違います。別紙の冒頭に「本文が優先し、役務は清掃と軽微な作業に限る」と断り書きを置きます。
清掃中に水漏れを見つけたら、どこまで対応する義務がありますか?
契約で決めた範囲です。民泊では、連絡したうえで止水栓の閉止など被害の拡大を防ぐ一次対応と、業者への立会いまでとし、修繕の手配は依頼主の役割と書くのが一般的です。作業者の安全を優先できることも書いておきます。
電球の交換などの軽い作業を引き受けても問題ありませんか?
清掃に直接付随する軽微な作業として業務に含めることはできます。内装の補修や設備の交換など修繕・工事の規模になるものは、別の契約にする旨を明記しておきます。
ホテル清掃と民泊清掃で、契約書の書き方は違いますか?
違います。常駐の管理者がいるホテルでは、異常を見つけたら通知と現状の維持にとどめる書き方、依頼主がいない民泊では、清掃会社が一次対応をする前提で範囲を決める書き方になります。
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本ページは一般的な情報提供です。届出・登録・許可の運用は、所管の行政機関や自治体によって異なることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた民泊・宿泊施設の清掃業務委託契約書、清掃スタッフとの業務委託契約書、利用申込書、ハウスクリーニングの利用規約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。参考: e-Gov法令検索 / 民泊制度ポータルサイト(観光庁) / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)