このページの要点
- 住宅宿泊管理業を営むには国土交通大臣の登録が必要(住宅宿泊事業法22条1項)。無登録の営業は罰則の対象。
- 業務を「清掃と、これに直接付随する現地の作業」に限り、苦情への対応・宿泊者名簿・鍵の管理は含まないと明記する。家主不在型では管理業者からの再委託が基本の形。
- 依頼主に届出番号の通知書又は旅館業の許可書の写しを出してもらい、届出・許可の継続を表明保証させる。
- 依頼主が管理会社やサブリースの事業者なら、契約上の支払の義務者を依頼主に固定する。
清掃会社が最初に確かめるのは「管理業」にならない線
民泊(住宅宿泊事業)の清掃を受けるとき、清掃会社が最初に押さえておきたいのは、自社の仕事が「住宅宿泊管理業」に当たらないように、業務の範囲を切っておくことです。
住宅宿泊事業法は、宿泊者の衛生の確保(定期的な清掃を含む)、安全の確保、外国人の宿泊者への案内、宿泊者名簿の備付け、宿泊者への説明(騒音・ごみの処理・火災の防止など周辺の生活環境への悪影響を防ぐための事項)、周辺の住民からの苦情・問合せへの対応を住宅宿泊事業者の義務とし(住宅宿泊事業法5条〜10条)、これらと届出住宅の維持保全をまとめて「住宅宿泊管理業務」と定めています(同法2条5項)。家主が不在になる民泊などでは、この管理業務を一つの住宅宿泊管理業者に全部委託しなければならず(同法11条1項、施行規則9条1項1号)、住宅宿泊管理業を営むには国土交通大臣の登録が必要です(同法22条1項)。登録を受けずに営むと、1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又はその併科の対象になります(同法72条1号)。
観光庁の住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)は、①法11条1項の委託を受けた住宅宿泊管理業者から再委託を受けて、清掃など管理業務の一部の事実行為を行う場合と、②家主居住型など委託の義務がない場合に、住宅宿泊事業者の責任の下で清掃などの一部の委託を受ける場合を、住宅宿泊管理業に当たらないものとしています。委託の義務がある民泊では、管理業務を複数の者に分けて委託することは認められていないため、家主不在型の民泊の清掃は、住宅宿泊管理業者からの再委託として受けるのが基本の形です。依頼主がオーナー本人か管理業者か、施設が住宅宿泊事業の届出住宅か旅館業の許可施設かを、契約の前に確かめておく理由がここにあります(再委託と多層構造)。
事務所がこれまで作成・レビューしてきた民泊清掃の契約書では、この点を次の3つの方向から書類に落としています。
- 業務の範囲を「清掃と、これに直接付随する現地の作業」に限る。
- 管理業務の中核(苦情への対応、宿泊者名簿の備付け、宿泊者への説明、鍵の管理など)は業務に含まないと明記する。予約の管理や宿泊契約の手続も業務に含めない(宿泊契約の代理・媒介に当たると、住宅宿泊仲介業や旅行業の登録の問題になる)。
- 届出・許可・管理の委託は依頼主の責任であることを、依頼主に表明保証させる。
運営代行の業務と、同じ並びにしない
比べてみると分かりやすいのが、運営代行の契約です。事務所が施設側から依頼を受けてレビューした運営代行の契約の業務内容の実施要領には、予約の管理、ゲストからの問合せへの対応、本人確認と宿泊者名簿、ハウスルールの説明、近隣の苦情の受付、宿泊者の不適切な行為への対応、清掃・衛生管理、設備の点検、月次の報告までが一体で並んでいました。民泊清掃の契約書は、これと同じ並びにならないように作る、というのが実務上の目安になります。
清掃の契約と運営代行の契約の違い
清掃の契約書に「苦情対応」「ゲスト対応」が入り込むと、運営代行と同じ並びに近づき、無登録営業が問題になり得ます。
新しく民泊清掃の会社を立ち上げる依頼者の案件では、サービスの紹介資料に「清掃前の退室後の利用状況の報告」「設備・室内の不具合の確認と報告・修繕対応」が強みとして挙がっていました。事務所の提案書では、清掃の枠内にとどまる限り管理業には当たらないが、苦情への対応など管理業務そのものまで実質的に引き受ける形に広がると、無登録営業が問題になり得る、と整理しました。
事務所の改訂例 業務の範囲と管理業
業務の範囲
宣伝の文言と契約の範囲がずれていると、依頼主は宣伝を根拠に「それも頼んだはず」と主張できます。
管理業務の扱い
清掃会社が管理業務を引き受けていないことを、契約の冒頭で両者が確認しておく意味があります。
別の清掃会社が受託者となった家主不在型の民泊の契約では、業務に含まないものとして、住宅宿泊管理業務その他の維持保全の包括的な引受け、旅館業法などに基づく営業・運営、宿泊契約の締結・料金の収受・宿泊者名簿の作成と備付け、仲介サイトとの連絡・掲載の管理・予約の管理、設備の修理・交換・工事、廃棄物の収集運搬と処分を並べました。あわせて「稼働率・宿泊料金・レビューの評価など営業の成果は保証しない」旨も置いています(業務範囲の書き方)。
依頼主が届出をしているかを確かめる
新しく清掃の会社を立ち上げる依頼者から、「オーナーが事業として民泊をしていることを、契約のときにどう確認すればよいか」というご相談がありました。依頼者からは、届出番号の通知書又は旅館業の許可書の写しを出してもらう方式が示され、事務所はこれを客観的で負担の少ない確認の方法と評価して、利用申込書の表明保証の条に次の内容を置きました。
利用申込書 第◯条(依頼主の表明保証)
1依頼主は、対象施設ごとに、住宅宿泊事業法の届出をして届出番号の通知を受けていること、又は旅館業法の許可を受けていることを表明し、保証します。
2依頼主は、前項の届出又は許可が、本契約の締結時及びサービスの提供期間中、有効に継続していることを保証します。
3依頼主は、当社の求めがあるときは、届出番号の通知書又は旅館業の許可書の写し(電磁的記録を含みます。)を遅滞なく提出します。
4当社は、依頼主の表明保証に違反があったことが判明したときは、催告をしないで、本契約の全部又は当該施設の物件登録を解除することができます。
届出をした事業者には都道府県知事(保健所設置市などではその長)から届出番号が通知されます(住宅宿泊事業法施行規則4条7項)。旅館業を営むには許可が必要です(旅館業法3条1項)。
家主不在型の民泊の契約では、依頼主自身が法令・条例に基づく届出・許可・登録・管理業務の委託を自己の責任と費用で行い、適法に運営していることを表明保証させ、営業の形態が変われば通知させ、違法な運営を理由に清掃会社が行政から資料の提出を求められたり第三者から請求を受けたりしたときは、依頼主が処理して損害と弁護士費用を補償する、という構成にしました。あわせて「清掃会社は住宅宿泊管理業者の登録を受けておらず、この契約は管理受託契約ではない」ことを依頼主に確認させる一文も入れています。
依頼主の「立場」も確かめる
ヒヤリングで確かめたこと 依頼主の立場と営業の形態
- 依頼主は、物件のオーナー本人ですか、管理会社ですか、転貸の事業者(サブリース)ですか。依頼主が管理会社の場合、オーナーとの管理受託契約が終われば清掃の依頼元が消えます。契約上の支払の義務者を依頼主に固定しておく必要があります。
- 営業の形態は、住宅宿泊事業・簡易宿所・特区民泊のどれですか。表明保証で確認する届出・許可の種類が変わります。
- 依頼主は住宅宿泊管理業者ですか。管理業者から清掃という一部を受ける構造になるかを確かめます(再委託と多層構造)。
清掃会社がオーナーから委託を受けた立場で、さらに個人事業主に再委託する案件では、発注者である清掃会社が「対象物件について再委託先に業務をさせる正当な権原を有すること」を表明保証する設計にしました。その権原の根拠となるオーナーとの契約の内容は、依頼者に確認していただく前提事実として残しています。
個人のオーナーとの契約は消費者契約か
ご相談と回答 個人の民泊オーナー
- 個人の民泊オーナーとの契約は、消費者契約になるのですか。
- 届出や許可を得て宿泊の事業を営むオーナーは、通常は「事業として」契約する者で、消費者には当たりません(消費者契約法2条1項)。確認のために、届出番号の通知書又は旅館業の許可書の写しの提出と表明保証を入れました。もっとも、消費者契約法が適用された場合に無効となり得る全部の免責や過大なキャンセル料は避ける設計にしています。
複数の物件と上位の契約――依頼主の側の事情で取引が止まるとき
新しく清掃の会社を立ち上げる依頼者の案件では、ヒヤリングシートで「物件ごとに個別の契約を結ぶか、包括的な契約を1本結んで物件を登録していく方式にするか」をお尋ねしました。利用申込書は後者で設計し、依頼主との契約は1本、清掃を頼む施設は清掃会社が指定する方法で「物件登録」していく形にしています。
この形に合わせて、届出・許可が有効であることの表明保証は対象施設ごとに求め、1か月前の予告による解除の条にも「特定の対象施設に係る物件登録の解除を含む」と書きました。同じオーナーの物件のうち1件だけ届出が失効していたとき、全部の取引を止めるか、その物件だけを止めるかを清掃会社が選べる設計です。包括契約なのに物件単位の整理がないと、1件の問題で全物件の取引が宙に浮きかねません。
依頼主が運営会社や管理会社のとき、その上の契約(施設の所有者との運営管理の契約、元請先との契約)が終わると、清掃の依頼元が消えます。事務所の書類では、この場面を条項で手当てしています。
上位の契約が終わったときの書き方
建物管理の契約のレビューでは、こうした定めがない場合、元請先の都合による中止は、民法の既定のルールでは、請負なら損害の賠償(逸失利益を含み得る)、準委任なら不利な時期の解除による損害の賠償の問題になる、とご説明しました(民法641条・651条)。
運営代行の下で清掃していたのに、運営代行とオーナーの契約が終わり、最後の月の清掃代が誰からも払われない、というのが典型的な失敗です。清掃会社が管理会社や運営代行の下に入るときは、上の契約が終わった場合にどこまで払われるかを、受ける前に条文で確かめておきます(再委託と多層構造)。
宿泊者向けの案内書と掲示は、依頼主の責任と書く
家主不在型の民泊の清掃を受ける契約では、避難経路、非常口、消火器・火災警報器の位置、緊急連絡先、ゴミの分別方法、夜間の騒音、喫煙、設備の使い方などを書いた案内書を冊子などで備え付けること、避難経路図など重要な事項を掲示することは依頼主が行い、その作成・掲示・適法性の確保は依頼主の責任で、清掃会社は作成・掲示の義務を負わない、としました。
宿泊者に説明すべき事項には「ごみの処理に関し配慮すべき事項」も含まれていて(住宅宿泊事業法施行規則8条2項2号)、宿泊者への説明は住宅宿泊事業者の側の義務です。清掃のついでに案内書の補充を頼まれることがあっても、作成・掲示の責任の所在はこの条で決まっています。
申込書の形をとるなら、いつ成立するかを決めておく
新しく清掃の会社を立ち上げる依頼者の案件では、依頼主との契約を「利用申込書」という形にしました。申込書なのに双方の署名欄があると、契約が成立したのが署名の時か、承諾を伝えた時かが分からなくなります。そこで、成立までを二段階に分けて条文にしました。
利用申込書による契約の成立
- 申込み依頼主が、清掃会社所定の申込書(電磁的方法によるものを含む)を出して申し込む。
- 承諾の通知清掃会社が承諾するときは、契約書の記名押印欄への記名押印、又は電子契約サービスによる電子署名をもって通知する。清掃会社の記名押印を、承諾の通知と位置づける。
- 成立と効力の発生通知した時点で契約が成立し、効力もその成立日から生じる。当事者が別に合意して契約締結日の欄に別の日を書いたときは、その日から生じる。
この依頼者は設立の登記の手続中で、草案を作った時点では法人として成立していませんでした。契約書の当事者の表示は法人名で作りつつ法人番号の欄は空欄にし、締結は設立の登記が終わってから行うよう、説明書に明記しました。開業の前から営業を始める新設の清掃会社で起きやすい論点です。
同じ案件の作成提案書では、依頼者の定款の事業目的に、清掃のほか工事や民泊関連の事業が含まれていることを前提事実の表に載せ、管理業との境界と建設業法の論点に影響するものとして整理しました。将来、管理業や修繕に手を広げるなら、清掃の契約とは別の契約の類型が要るため、修繕・工事の契約の類型を整備する予定があるかを確認事項に入れています。
緊急時の業者のリストを渡すときは「情報の提供」にとどめる
家主不在型の民泊の清掃を受ける契約の前提資料(依頼者の同意書)には、ガラス店・水道業者などの緊急時の業者をリストで紹介する項目がありました。ヒヤリングシートでは、紹介した業者の作業内容・料金・トラブルについて清掃会社が責任を負わない旨を明記しないと、紹介した責任を問われるおそれがあると注記し、責任を負わない旨を明記するか、リストを契約書に載せず参考資料の扱いにするかをお尋ねしました。条文は次のとおりです。
清掃業務委託契約 第◯条(緊急時の対応業者に関する情報の提供)
1乙は、甲の便宜のため、別紙に掲げる業者に関する情報を提供する。
2前項の情報の提供は、参考のためのものであり、乙は、当該業者の選定、推奨又は媒介を行うものではない。
3甲は、当該業者に対する依頼、訪問の日時、対応の可否、料金及び作業の内容の確認その他一切の調整を、自らの責任において行う。
4当該業者が行った作業の内容、品質、料金、遅延その他当該業者と甲との間に生じた事項について、乙は、一切の責任を負わない。
業者の一覧を載せた別紙は、別紙の条で「参考のために掲げるもので、業務の内容を構成しない」と位置づけました。
この契約は、設備の修理・交換・工事を業務の外に置いています。業者の手配と調整を依頼主の側に残す書き方を、業者を紹介する場面でも崩さないための条です。紹介のつもりで業者の日程の調整や料金の確認まで引き受けていくと、このページの比較表で見た運営代行の業務(点検・修繕の手配)の並びに近づきます。業務に含めないものの書き方は業務範囲のページで、清掃会社が業者の費用を立て替えたときの請求の仕方はリネン・消耗品のページで解説しています。
よくあるご質問
民泊の清掃だけを請け負う場合、住宅宿泊管理業の登録は必要ですか?
清掃は管理業務(衛生の確保)の一部ですが、住宅宿泊管理業者から清掃の部分だけ再委託を受ける場合や、委託の義務のない家主居住型の民泊から清掃を受ける場合は、住宅宿泊管理業に当たらないとされています(住宅宿泊事業法施行要領)。家主不在型の民泊では依頼主が管理業者かどうかを確かめ、苦情への対応や宿泊者名簿など管理業務の中核を引き受けない書き方にします。
清掃のときに設備の不具合を報告するのは、管理業務に当たりますか?
不具合を見つけて報告すること自体は、清掃に付随する範囲として整理できます。修繕の手配や維持保全を包括的に引き受ける書き方にならないよう、報告と一次対応の範囲を契約で決めておきます。
依頼主が届出をしているかは、どうやって確認すればよいですか?
届出番号の通知書又は旅館業の許可書の写しを出してもらい、届出・許可が契約期間中も有効に続いていることを表明保証させる方法があります。違反が分かったときに解除できる条項も置きます。
依頼主が管理会社の場合、契約書で何に気をつければよいですか?
オーナーとの管理受託契約が終わっても清掃料金を回収できるよう、契約上の支払の義務者を依頼主(管理会社)に固定します。依頼主がオーナーから清掃をさせる権原を持っていることも確認します。
届出のない民泊から清掃を頼まれたら、どうすればよいですか?
依頼主の法令違反に巻き込まれるおそれがあるので、届出・許可の写しの提出を受けてから契約するのが安全です。表明保証に違反があれば解除できる条項を置いておきます。
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本ページは一般的な情報提供です。届出・登録・許可の運用は、所管の行政機関や自治体によって異なることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた民泊・宿泊施設の清掃業務委託契約書、清掃スタッフとの業務委託契約書、利用申込書、ハウスクリーニングの利用規約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。参考: e-Gov法令検索 / 民泊制度ポータルサイト(観光庁) / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)