このページの要点
- 業務委託や個人事業主としての受注も、報酬を受ける活動にあたる。在留資格の範囲外なら、資格外活動の許可がなければ引き受けられない。
- 留学・家族滞在は、許可があっても原則週28時間以内で、他の勤務先との合計。稼働時間を客観的に確認できない出来高制は、包括許可の範囲に収まるかが問題になる。
- 仕事を渡した側にも不法就労助長罪(入管法73条の2)の責任がある。在留カードの確認、記録、保管しない運用、満了日の管理を手順にする。
- 契約書は「受託者の責任」と書いて終わらせず、提示・申告・変更の通知・中止と解除・報酬の清算を条文にする。特定技能は受入れ機関が直接雇用する枠組みで、業務委託とは別。
民泊の清掃に、外国人のスタッフに入ってもらえるか。結論から言うと、国籍を理由に断る必要はありません。ただし、仕事を渡す前に、「その人が持つ在留資格で、清掃の仕事を報酬を得て引き受けられるか」を確かめる必要があります。在留資格とは、外国人が日本で行える活動の枠を定めたものです。契約書の表題を「業務委託」にしても、この答えは変わりません。
このページが扱うのは、民泊の清掃会社が、外国人の個人や、外国人を含むスタッフに、清掃の仕事を出すときの論点です。雇用か業務委託かの一般的な判断は清掃スタッフとの業務委託契約書で扱っているので、ここでは、外国人であることで加わる論点に絞ります。要点は次の5つです。
- 外国人が日本で報酬を得て働けるかは、国籍ではなく、在留カードに記載された在留資格と就労の制限、裏面の資格外活動許可の内容で決まる。
- 業務委託や個人事業主としての受注も、「報酬を受ける活動」「事業を運営する活動」にあたる。在留資格の範囲外なら、許可がなければ引き受けられない。
- 留学や家族滞在の人は、許可があっても原則として1週28時間以内で、他の勤務先との合計で数える。出来高制で時間を記録しない業務委託は、この上限と相性が悪い。
- 清掃の仕事を渡した側にも、不法就労助長罪(入管法73条の2)の責任がある。在留カードを確認しなかった過失があれば、知らなかったでは済まない。
- 契約書で「就労資格は受託者の責任」と書いて関与しないと決めても、渡した側の責任はなくならない。確認の手順、変更の通知、停止と解除を条文にする。
「業務委託なら在留資格は関係ない」は本当か
関係あります。外国人が在留資格に応じた活動以外で、収入を伴う事業を運営する活動や、報酬を受ける活動を行うには、あらかじめ資格外活動の許可を受けていなければなりません(入管法19条。出入国在留管理庁の「資格外活動許可について」の説明)。雇用されて給料をもらう場合だけでなく、自分の事業として仕事を請けて報酬を得る場合も、文言のうえでは同じ枠に入ります。出入国在留管理庁は、留学の在留資格の包括許可について、個人事業主として依頼を受けて成果に応じた報酬を得る活動も対象に含まれるとしています(ただし後で見るとおり、稼働時間を客観的に確認できるものに限られます)。
仕事を出す側も同じです。入管法73条の2は、事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者を、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定めています。出入国在留管理庁は、雇おうとした外国人が不法就労者だと知らなくても、在留カードを確認していないなどの過失がある場合には処罰を免れないと案内しています。条文は「事業活動に関し」「させた」という書き方で、雇用契約であることを要件にしていません。契約の表題が「業務委託」であることは、清掃の仕事を事業として渡した事実を消さない、と読むのが安全です。
民泊の清掃で、この問題が起きやすい理由は、働き方の特徴にあります。
- 仕事が短時間の単発で、チェックアウトからチェックインまでの数時間に集中する。学生や、家族の都合で短時間だけ働きたい人が入りやすい。
- 現場は無人のことが多く、鍵はキーボックスで受け渡す。依頼する側が本人と顔を合わせず、在留カードを見る機会がないまま仕事が始まる。
- 人手が足りない繁忙期に、スタッフの知人や家族が「代わりに」入る。誰が作業したのかが、契約の当事者と一致しなくなる。
- 報酬は1件いくらの出来高で、稼働時間を記録しない契約が多い。時間の上限が付く在留資格と食い違う。
契約の当事者に個人事業主の外国人を迎えるときの考え方を、在留カードの表示ごとに整理すると、次のとおりです。
| 表示(一般的な例) | 意味 | 清掃の仕事を渡すときの確認 |
|---|---|---|
| 就労制限なし | 就労活動に制限がない在留資格の人(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者など) | 仕事の内容に制限はない。在留期間の満了日を台帳に載せ、更新後に再確認する |
| 在留資格に基づく就労活動のみ可 | 就労目的の在留資格の人。認められる活動は在留資格ごとに決まる | 清掃の作業が、その人の在留資格の活動に含まれるかを確認する。含まれなければ、別に資格外活動の許可が要る |
| 就労不可 | 留学・家族滞在など。原則として働けない | 裏面の資格外活動許可欄に「許可」の記載があるときだけ、許可の範囲で働ける |
特別永住者の人は在留カードではなく特別永住者証明書を持ち、活動に制限がありません。特定活動の人は、認められる活動が一人ひとり違い、旅券に添付された指定書の内容で決まります。表示だけで判断せず、指定書も見ます。
在留カードで何を、どの順番で確認するか
確認は、仕事を渡す前に、本人から在留カードの提示を受けて行います。見る場所は、表面の「就労制限の有無」と「在留期間(満了日)」、裏面の「資格外活動許可欄」の3か所です。裏面には、許可があるときに「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」のような記載があります。
確認の手順(一般的な例)
- 目的を伝えて提示を求める就労の可否の確認と、在留期間の管理のために見せてほしい、と伝える。国籍で選別するためではないことを、あらかじめ説明する
- 券面の3か所を読む就労制限の有無、満了日、裏面の許可欄。顔写真と本人が一致するかも見る
- 偽変造とカードの失効を確かめる出入国在留管理庁の無料の読取アプリで、ICチップの情報と券面を照合する。番号の失効情報も照会できるが、結果はカードそのものの有効性を証明するものではない
- 記録する確認した日、確認した人、就労制限の欄の記載、満了日、許可の内容を台帳に残す。写しを取るときは、利用目的を本人に示す
- 返却する旅券や在留カードは、事業主が保管しない。見せてもらって、その場で返す
- 満了日の前に再確認する更新が許可されると新しい在留カードが交付される。満了日の前に、新しい券面で再確認する
ここまでの手順は、出入国在留管理庁と厚生労働省の公表資料で案内されている内容に沿っています。旅券や在留カードを事業主が保管しないことは、厚生労働省の指針が求める事項です。
在留カードの情報は個人情報です。取得するときは利用目的をできる限り特定し(個人情報保護法17条)、本人から書面で直接取得するときはあらかじめ目的を明示します(同法21条2項)。取得した後は、安全管理のために必要かつ適切な措置を講じる必要があります(同法23条)。なお、個人情報保護委員会のガイドラインは、単なる国籍や「外国人」という情報は法的な地位であって、要配慮個人情報にいう「人種」にはあたらないと整理しています。それでも、在留カードの写しは必要な範囲にとどめて保管し、不要になったら廃棄する運用が基本です。
スタッフから集めた書類は、現場の鍵や宿泊者の情報とは別の場所に置き、見られる人を限ります。鍵の扱いは民泊のキーボックス・鍵の管理と契約書で整理しています。
留学・家族滞在のスタッフに出来高で任せるときの、週28時間の壁
民泊清掃のスタッフで最も多いのは、留学の在留資格の学生です。留学や家族滞在の人が報酬を得る活動をするには、資格外活動の許可が必要です。包括許可は、原則として1週28時間以内で、風俗営業等が営まれている場所での活動は含まれません。留学の場合は、教育機関の長期休業期間に限り、1日8時間以内とされています。複数の勤務先があるときは、その合計で週28時間以内でなければなりません(厚生労働省の事業主向け資料)。
業務委託で引き受ける場合に、見落とされやすい点があります。出入国在留管理庁は、留学の包括許可の対象になる個人事業主の活動を、稼働時間を客観的に確認することができるものに限っています。業務委託契約や請負契約で標準的な労働時間が明確でないものは、個別の許可が必要だと説明しています。1件いくらの出来高で、作業時間を誰も記録していない契約は、この説明に照らすと、包括許可の範囲に収まるかが怪しくなります。
週の合計時間の計算例(数値は説明用の仮の例。上限が原則週28時間以内の場合)
土日の4件のうち2件(6時間分)を別の人に回すと、合計は26時間になります。受けるかどうかを週の途中で本人が判断できる仕組みが要ります。
この計算で分かるのは、清掃会社の側が見ているのは自社の仕事だけで、他の勤務先の時間は見えない、という点です。上限を守る責任の置き方には、二つの方向があります。
上限を守る仕組みの置き方
二つは択一ではありません。現場への到着と完了の時刻は、写真報告のタイムスタンプで足りることが多く、これは清掃の写真報告の運用とも重なります。時刻は上限の確認のために使い、作業の順序や時間配分を細かく指示するためには使いません。
独立した事業者として引き受ける形と、時間を把握する形は、緊張関係にあります。作業の方法や時間配分を指示すると、労働者と評価される材料になります。時間は結果の記録として扱い、指示とは分けて運用します。契約書には、次のように書きます。
業務委託契約 第◯条(資格外活動の許可がある場合の活動時間)
1乙は、資格外活動の許可を受けて本契約に基づく業務を行うときは、他の勤務先及び受託先における活動を含め、許可された時間の範囲を超えて活動しない。
2乙は、前項の範囲を踏まえ、個別業務を受託するかどうかを自らの判断で決める。甲は、乙が前項の範囲を超えるおそれがあるとして個別業務を辞退したことを理由に、不利益な取扱いをしない。
3乙は、個別業務の到着時刻及び完了時刻を、甲が定める方法により報告する。この報告は、前項の範囲の確認のためにのみ用い、作業の方法又は時間配分を指示するために用いない。
4乙は、前項の範囲を超えるおそれが生じたとき、又は許可の内容に変更があったときは、遅滞なく甲に通知する。甲は、通知を受けたときは、個別業務の依頼を見合わせることができる。
第3項で時刻の報告を求める以上、報告を求める理由を条文に書いておくことで、時間管理の目的を上限の確認に限定します。実際の運用が条文と違えば、条文は役に立ちません。
特定技能・技能実習・就労系の在留資格の人に、業務委託はできるか
留学などと違い、働くことを目的とする在留資格の人は、認められる活動の範囲が在留資格ごとに決まっています。清掃の仕事を引き受けられるかは、次の考え方で整理します。就労の可否そのものを判断するのは出入国在留管理庁の制度で、契約書を作る側が代わって決めることはできません。ここでは、確認の筋道を示します。
| 在留資格のグループ | 清掃の仕事を引き受けられるか | 契約で気をつけること |
|---|---|---|
| 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者 | 活動に制限がないので、雇用でも業務委託でも引き受けられる | 満了日(永住者は期限なし)の管理は、在留カードの有効期間の確認として残す |
| 留学、家族滞在 | 資格外活動の許可の範囲内。原則週28時間以内で、他の勤務先との合計 | 稼働時間の確認と上限の条項(前の章) |
| 特定技能 | 特定の産業分野の業務に従事するための在留資格。分野の一つにビルクリーニングがある | 受入れ機関が雇用して働いてもらう枠組み。清掃会社が個人として業務委託で使う形とは別の話(次の項) |
| 技能実習(令和9年4月1日から、育成就労の運用が始まる) | 認定された計画に基づいて、決められた受入れ先で行う活動 | 計画の外で、別の発注者の仕事を個人で引き受ける前提にはなりにくい |
| 技術・人文知識・国際業務などの就労系 | その在留資格に応じた活動の範囲だけ。通訳や事務などで在留している人が、清掃の作業を報酬を得て引き受けるのは、範囲外になり得る | 範囲外の副業は、資格外活動の許可の対象。許可の内容を確認する |
| 特定活動 | 指定書の内容で決まる | 旅券に添付された指定書を見て、清掃が含まれるかを確認する |
ビルクリーニング分野の特定技能は、清掃会社が「受け入れる側」になる制度
民泊の清掃会社が、外国人材に関心を持つとき、最初に出てくるのが特定技能です。出入国在留管理庁の説明では、ビルクリーニング分野の1号特定技能外国人が行う業務の区分は「建築物内部の清掃」です。受入れ機関の要件として、都道府県知事から建築物衛生法12条の2第1項1号の建築物清掃業、又は8号の建築物環境衛生総合管理業の登録を受けた営業所であること、厚生労働省が設置する分野別の協議会の構成員になること、調査や指導に協力することなどが挙げられています。雇用の形は直接雇用とされています。
ここから読み取れるのは、特定技能の外国人に清掃を任せるなら、受入れ機関になる清掃会社が、登録を受けたうえで、自社の従業員として雇い入れる、という枠組みだということです。フリーランスの外国人に業務委託で仕事を出すことや、別の会社から人員を回してもらう形とは、前提が違います。人員を回してもらう形が労働者派遣にあたるかは、労働者派遣法2条1号が、自己の雇用する労働者を、その雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、他人のために労働に従事させることと定めていることを手がかりに考えます。
もう一つ、民泊の清掃に特有の確認事項があります。出入国在留管理庁のページには、2号の実務経験の要件として「建築物(住宅を除く)内部の清掃」という書き方が出てきます。住宅宿泊事業で使う住戸の清掃が、分野の運用要領にいう建築物の清掃に含まれるのか、それとも住宅の扱いになるのかは、運用の基準を直接読んで確かめる必要があり、ここでは断定しません。登録の要件と合わせて、民泊の現場で分野の業務が成り立つかを、導入の前に詰める項目です。
外国人材を清掃の現場に入れる、三つの入口
個人として業務委託で受ける
- 在留資格が「就労制限なし」か、資格外活動の許可がある
- 稼働時間と報酬の確認が必要
- 契約書は、確認の手順と変更の通知が中心
一番手軽だが、確認が薄くなりやすい入口です。
雇用して受け入れる
- 在留資格の活動に清掃が含まれる人を雇う
- 雇入れと離職のたびに、ハローワークへ届け出る
- 特定技能なら、受入れ機関の要件を満たす
雇用管理の義務が加わるが、現場の指揮は組み立てやすい入口です。
外国人を雇う会社に委託する
- 契約の相手は法人で、在留資格の確認は雇用する法人が行う
- 発注側が現場で個々の作業者に指示を出す形は避ける
- 作業者の入れ替えは、再委託の手続による
責任の線は引きやすいが、実態が派遣になると問題が移る入口です。
三つのどれを選ぶかで、契約書の中心が変わります。
雇用になる場合、派遣になる場合、代わりの人が入る場合
外国人であっても、雇用か業務委託かは働き方の実態で決まります。労働基準法9条は、労働者を、事業に使用される者で賃金を支払われる者と定めています。仕事を断る自由がなく、作業の手順や時間を細かく指示され、他の仕事を受ける余地もないなら、契約書が業務委託でも労働者と評価される方向に動きます。詳しい判断の要素は清掃スタッフとの業務委託契約書のページのとおりです。
雇用と評価されるなら、外国人であることで次のことが加わります。雇入れと離職の際には、氏名、在留資格、在留期間などを確認し、ハローワークへ届け出る義務があります。届出をしなかったり、虚偽の届出をしたりすると、30万円以下の罰金の対象になります(厚生労働省の案内)。業務委託のつもりで運用していても、実態が雇用なら、この届出が必要だったことになる可能性があります。
代わりの人が入るとき
民泊の清掃は、体調不良や交通の乱れで、当日に作業者が入れ替わる場面が多くあります。契約の相手は1人でも、現場に来たのは別の人だった、ということが起きます。民泊清掃の再委託と多層構造で整理した考え方に、外国人であることの確認を重ねると、代わりの人の扱いは次のようになります。
- 代わりの人を事前に届け出させる。氏名と、在留カードの確認を済ませた旨を、清掃会社に伝えてから鍵を渡す。
- 届出のない人が入った場合は、報酬の対象にしない旨と、鍵の返却を求める旨を、あらかじめ契約に書く。
- 代わりの人が外国人であるかどうかにかかわらず、同じ確認の手順を適用する。外国人にだけ厳しく見えない運用にする。
- 作業を任せられる人の範囲を、再委託の条項と同じ形で、事前の承諾を要する形にする。
国籍で線を引かない
労働基準法3条は、使用者が労働者の国籍を理由として、賃金や労働時間その他の労働条件について差別的な取扱いをすることを禁じています。業務委託の相手は労働者ではないので、この条文が直接に及ぶとは限りません。それでも、同じ作業をする人の単価を国籍で変える、国籍を理由に鍵の預け方を変える、といった運用は、実態が雇用と評価されたときに問題になります。確認の対象は、国籍ではなく、在留資格と許可の内容です。
人材の紹介を受ける契約でも、同じ点が出てきます。紹介の条件として「主として特定の国籍の者」と書く契約書を見かけますが、仕事に就けるかを決めるのは在留資格です。条件は、必要な在留資格、日本語の能力、業務の経験で書き、国籍そのものを基準にしない書き方が、後で説明しやすくなります。
よくある失敗と直し方:就労資格の条項を、どう書き換えるか
契約書に「就労資格」の条項を置く書き方は、実際に見られます。ただ、受託者に全部を負わせる書き方や、確認の手順がない書き方は、仕事を渡した側の責任を消してくれません。よく見られる書き方と、整えた書き方を並べます。
書き方の例(一般的な例) 就労資格と外国人スタッフの条項
就労資格の責任
受託者の責任にする書き方は、海外から遠隔で受託する場面を想定した形で、日本の現場で清掃をさせる場面では、渡した側の確認の義務が残ります。確認の手順を置いたほうが、確認を尽くしたことの裏づけになります。
変更があったとき
「協議する」だけでは、協議の間も作業が続きます。通知と中止を分けて書くと、その日から止められます。
国籍の条件
就ける仕事を決めるのは在留資格です。国籍で書くと、条件と実態がずれ、差別的な取扱いとして説明しにくくなります。
報酬の扱い
準委任の性質があるなら、履行が中途で終わっても、既にした履行の割合に応じて報酬を請求できます(民法648条3項)。全額不支払いにすると、完了済みの作業の報酬まで否定することになり、争いになりやすくなります。
業務委託契約 第◯条(在留資格等の確認と変更の通知)
1乙は、本契約の締結前に、在留カードその他の在留資格を確認できる書類を甲に提示する。乙が特別永住者であるときは、特別永住者証明書を提示する。
2乙は、在留資格、在留期間の満了日、就労制限の有無及び資格外活動許可の内容が、提示した書類のとおりであることを申告する。乙が特定活動の在留資格を有するときは、指定書の写しを提示する。
3甲は、前二項により確認した事項を、就労の可否の確認及び在留期間の管理にのみ利用し、書類を預からない。甲が写しを取るときは、利用目的を乙に示し、不要になったとき速やかに廃棄する。
4乙は、在留期間の満了日の前に、更新の結果を甲に通知し、新しい在留カードを提示する。更新の申請中であるときは、その旨を甲に通知する。
5乙は、第2項の事項に変更が生じたとき、又は変更が生じるおそれがあるときは、遅滞なく甲に通知する。
6甲は、前項の通知を受けたとき、又は乙が本契約に基づく業務を行うことが法令に反すると認めたときは、個別業務の全部又は一部を中止させ、乙に通知して本契約を解除することができる。この場合の報酬は、第◯条(報酬の清算)による。
条文の形は、在留資格の確認を契約の前の手続として置く考え方です。就労の可否の判断は出入国在留管理庁の制度に属するので、契約書は、確認の手順と、誤りがあったときの扱いを定めるものとして書きます。
最後の条文で、中止だけでなく解除まで書く理由は、民法の整理にあります。在留資格を失うなどで、法令上、業務を行えなくなったとき、債務の履行が契約や取引上の社会通念に照らして不能であれば、債権者はその履行を請求できません(民法412条の2第1項)。債務の全部の履行が不能であるときは、債権者は催告をしないで直ちに契約を解除できます(同法542条1項1号)。ただ、「不能かどうか」は事案ごとの評価になるので、条文にあらかじめ解除の根拠を置いておくほうが、現場で迷いません。
ヒヤリングで確認すること:外国人スタッフを迎える前の問い
契約書を作る前に、次の問いを確認します。答えによって、条文の中心が変わります。
ヒヤリングで確かめる事項(一般的な例) 外国人スタッフに清掃を任せる前に
- その人の在留カード表面の「就労制限の有無」欄は、どう記載されているか制限なしなら内容の制限がなく、制限ありなら清掃が活動の範囲に入るかの確認が要る。この一点で、確認の深さが変わるため
- 留学や家族滞在の人か。他の勤務先はあるか。週の稼働時間はどれくらいか上限は他の勤務先を含めた合計で数える。自社の仕事の分だけを見ていると、超過に気づけないため
- 出来高制か、時給制か。到着と完了の時刻を記録しているか包括許可の対象になる個人事業主の活動は、稼働時間を客観的に確認できるものに限られる。記録の有無で、上限の確認の仕組みが変わるため
- 雇用か、業務委託か、外国人を雇う会社への委託か雇用なら届出が要り、委託なら相手の法人の確認が中心になる。形で、確認の置き場所が違うため
- 特定技能など、分野の枠組みで受け入れる予定があるか。ビルクリーニングの登録は受けているか受入れ機関の要件を満たさないまま導入を考えても進めないため
- 代わりの人が入る場面はあるか。その人の在留カードは誰が、いつ確認するか契約の相手と現場に来た人が違うと、確認が漏れる場面になるため
- 在留カードの確認を、いつ、誰が、どう記録するか。写しを取るか確認を怠った過失の有無が、処罰を分けるため。写しを取るなら、利用目的の特定と安全管理が要るため
- 在留期間の満了日を、どの台帳で管理するか。満了の何か月前に確認するか満了日を過ぎた就労が不法就労になるのを防ぐため。更新申請中の扱いも決めておく
- 現場の指示は、どの言語、どの方法で伝えているか。洗剤の使い分けや、鍵の扱いを理解しているか指示が伝わらないと、設備の破損や、鍵の取扱いの事故につながるため
- 報酬の清算で、在留資格の事情で業務が止まったときの扱いを決めているか完了済みの作業の報酬を巡る争いを避けるため
契約書の外で整える:言語、鍵、検収、日々の記録
契約書に条項を置いても、現場で伝わっていなければ、事故や行き違いは防げません。外国人のスタッフを迎えるときに、民泊の清掃の運用で見直す点を整理します。
スタッフを迎えてから最初の1か月の流れ(一般的な例)
- 契約前在留カードの確認、台帳への記録、満了日の登録
- 初回の同行鍵の受け渡し、キーボックスの暗証番号の扱い、立入りの手順を、実際に見せて説明する
- 最初の数件作業後の写真報告の撮り方と、検収の基準を、写真付きの手順書で示す
- 時間の確認到着と完了の時刻を、写真報告から拾えているかを確認する
- 1か月後稼働の合計時間と、満了日の登録を点検する
言語については、契約書の翻訳をつけるかどうかの前に、現場の指示を何で伝えるかを決めます。日本語の文字だけの手順書では、洗剤の使い分けや、立入り禁止の場所が伝わらないことがあります。写真や図を中心にし、鍵と暗証番号に関する注意は、口頭と書面の両方で伝えます。再清掃の基準も、言葉の説明だけでなく、合格の状態の写真を見せるほうが、行き違いが減ります(清掃の検収と再清掃のルール)。
よくあるご質問
外国人のスタッフに、業務委託で民泊の清掃を頼むことはできますか。
在留資格によります。就労制限のない在留資格の人は引き受けられます。留学や家族滞在の人は、資格外活動の許可の範囲内で、原則週28時間以内(他の勤務先との合計)です。出来高制で稼働時間を記録しない契約は、包括許可の対象になる個人事業主の活動を稼働時間を客観的に確認できるものに限る、という説明と合いにくくなります。
在留カードは、どこを見ればよいですか。
表面の「就労制限の有無」と「在留期間(満了日)」、裏面の「資格外活動許可欄」の3か所です。特定活動の人は旅券の指定書も見ます。旅券や在留カードは事業主が保管せず、見せてもらってその場で返します。
契約書に「就労資格は受託者の責任」と書けば、確認しなくてもよいですか。
よくありません。入管法73条の2は、事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせた者を処罰し、在留カードを確認していないなどの過失があれば、知らなかったことでは免れないと案内されています。契約書には、提示、申告、変更の通知、中止と解除の手順を置きます。
特定技能の外国人に、個人事業主として清掃を頼めますか。
特定技能は特定の産業分野の業務に従事するための在留資格で、ビルクリーニング分野の受入れ機関は、建築物衛生法に基づく登録を受けた営業所であることなどが要件とされ、雇用の形は直接雇用とされています。個人として業務委託で使う形とは前提が違います。民泊の住戸の清掃が分野の対象に含まれるかは、運用の基準で確認が必要です。
体調不良で代わりの人が来ることになりました。外国人でもそのまま入ってもらってよいですか。
事前の届出と在留カードの確認を済ませてから鍵を渡します。届出のない人が入った場合は、報酬の対象にしないことと、鍵の返却を求めることを、契約に書いておきます。外国人にだけ厳しくならないよう、代わりの人全員に同じ手順を使います。
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本ページは一般的な情報提供です。届出・登録・許可の運用は、所管の行政機関や自治体によって異なることがあります。紹介している書き方は、民泊・宿泊施設の清掃に関する一般的な契約実務を整理した例であり、特定の事業者の契約書を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 民泊制度ポータルサイト(観光庁) / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)