このページの要点
- 管理規約は依頼主と管理組合の約束だが、現場で最初に影響を受けるのは清掃会社なので、関係部分の写しを依頼主から受け取り、守る範囲を契約で決める。
- 民泊の可否は規約と法令で決まる。清掃会社は適法性の判定役ではなく、依頼主の表明と、停止の申入れを受けたときの扱いを契約に置く。
- リネンの搬入、ゴミ置場の使用、共用部分の通行は、場所・時間・方法を依頼主が書面で指定し、指定の外は業務の外とする。
- 近隣の苦情は、清掃会社が受け付けて記録し、依頼主の窓口へ取り次ぐ。解決も宿泊者への注意もしない。清掃作業そのものへの苦情だけは清掃会社が直す。
先に結論をまとめます。分譲マンションの一室で行う民泊の清掃では、清掃会社が守るルールは、依頼主との契約書だけでは決まりません。その建物の管理規約(区分所有者が集まる管理組合が定める、建物の基本ルール)と使用細則(規約の下で、共用部分の使い方やゴミ出しの曜日などを細かく決めたルール)が、作業の時間、通り道、荷物の置き場所を実際に決めているからです。専有部分は各戸の室内、共用部分はエントランス、廊下、エレベーター、ゴミ置場などをいいます。清掃会社が毎回触れるのは、むしろ共用部分です。
- 管理規約は管理組合と区分所有者の約束で、清掃会社は当事者ではない。ただし現場で最初に影響を受けるので、関係部分の写しを依頼主から受け取り、守る範囲を契約で決める。
- 民泊ができるかは、規約と法令で決まる。清掃会社は適法性の判定役ではないので、依頼主の表明と、停止の申入れがあったときの扱いを契約に置く。
- リネンの搬入、ゴミ置場、共用部分の通行は、場所・時間・方法を依頼主に書面で指定してもらい、指定の外は業務の外とする。
- 近隣の苦情は、清掃会社が受け付けて記録し、依頼主の窓口へ取り次ぐ。解決はしない。清掃作業そのものへの苦情だけは、清掃会社が直す。
入室の手段はキーボックス・鍵の管理のページ、持ち帰りの可否はゴミと廃棄物処理法のページで扱っています。ここでは「建物の側のルール」との関係に絞ります。
管理規約は、当事者でない清掃会社にも効くのですか?
管理規約が清掃会社を直接に縛るわけではありません。しかし無関係でもありません。筋道は三つあります。
- 依頼主との契約を通じて:管理組合から指摘を受けるのは区分所有者である依頼主です。依頼主はその負担を、契約で清掃会社に回そうとすることがあります。
- 不法行為として:契約関係がなくても、従事者が共用部分を壊したり汚したりすれば、賠償の問題になります(民法709条)。従業員を使う場合は、使用する側の責任も問われます(民法715条)。
- 現場の事実として:管理人が規約に反する作業を見つければ、その場で止めさせます。契約書の文言より先に、現場の運用が作業を決めます。
国土交通省の「マンション標準管理規約」は、専有部分の貸与を定める19条で、区分所有者に、借りた人(占有者)へ規約と使用細則を守らせることを求めています。規約の効力は占有者にも及ぶ、という整理です。部屋を占有せず、委託を受けて立ち入るだけの清掃会社は、その外側にいます。依頼主が規約に反したときは、区分所有法が、共同の利益に反する行為への差止め、使用禁止、競売などの請求を定めており(区分所有法57条から60条まで)、標準管理規約47条3項3号は、そうした訴えの提起を総会の特別多数決議の事項としています。管理組合の動きは、まず依頼主に向かいます。
ここから、契約書で押さえることが二つ出ます。依頼主から規約の関係部分を受け取ることと、依頼主が管理組合から指摘を受けたら、清掃会社に知らせることです。これがないと、清掃会社は知らないまま規約に反する作業を続け、後で責任を問われます。「規約を遵守する」とだけ書く条項は、見たことのないルールまで守る約束になり、違反の責任だけが清掃会社に残ります。
第◯条(建物のルール)の例
1甲は、本契約の締結までに、物件が属する建物の管理規約及び使用細則のうち、共用部分の使用、入館、作業の時間、物品の搬入出、ゴミの排出その他乙の業務に関係する部分(以下「建物のルール」という。)の写しを乙に交付する。建物のルールが改定されるときは、甲は、施行の前に乙に通知する。
2乙は、前項により交付又は通知を受けた建物のルールを遵守する。管理組合又は管理人が乙の従事者に業務上の注意を直接与えたときは、乙は、これに従い、速やかに甲に報告する。
3甲の交付又は通知が怠られ、又は遅れたために、乙が建物のルールに反する結果となったときは、乙は責任を負わない。ただし、乙が当該ルールを知っていたときは、この限りでない。
4外部業者の入館の届出、エレベーターの養生その他、管理組合が業者に求める費用は、甲が事前に承諾した実費に限り、甲が負担する。
第3項のただし書は、清掃会社が実際に知っていて続けたときまで免責しないという線引きです。第4項の費用は、追加料金の設計と合わせて決めます。
民泊が規約で禁止・制限されたら、清掃の契約はどうなりますか?
同じマンションでも、規約の書き方で結論が変わります。標準管理規約12条(専有部分の用途)は、民泊について次のような書き方の例を示しています。
| 規約の書き方 | 扱い | 清掃の依頼で確かめること |
|---|---|---|
| 住宅宿泊事業を可能とする | 届出をして行う民泊ができる | 届出の有無。管理組合への事業開始の届出の要否 |
| 住宅宿泊事業を禁止する | 届出をしても行えない | 禁止の対象になっていないか。禁止の決議がないか |
| 一定の態様のみ可能(家主居住型など) | それ以外の態様は禁止と解される | 依頼主が家主不在型で運営していないか |
| 定めがない | 専有部分の用途は限定されていないと解される(国のガイドライン) | 禁止の方針の決議の動き |
国のガイドライン(住宅宿泊事業法施行要領)は、「宿泊料を受けて人を宿泊させる事業」のように民泊を含む事業を禁止する規定も、民泊の禁止にあたるとしています。標準管理規約のコメントは、旅館業法3条1項の簡易宿所の許可による「民泊」は、通常は住宅としての使用に含まれないので、可能としたいなら明記が望ましいとしています。民泊が住宅宿泊事業か旅館業の許可による営業かでも、規約上の扱いが変わります。
規約は改正されます。標準管理規約の定めでは、規約の制定・変更・廃止は、組合員総数と議決権総数のそれぞれ4分の3以上の賛成で決まります(47条3項1号)。いま認められているマンションでも、総会の決議で、ある日から禁止になることがあります。住宅宿泊事業は、届出をして行い(住宅宿泊事業法3条1項)、宿泊させる日数が1年間で180日を超えないものとされており(同法2条3項)、稼働日数の上限は料金設計にも響きます(料金と追加料金の決め方)。
清掃会社は、依頼主の民泊が適合しているかを判定する立場ではありません。そのかわり、依頼主に適合を表明させ、停止の申入れを知らせてもらい、その場合に業務を止められるようにしておきます。止まった後の報酬は、原因で分かれます。債権者(依頼主)の責めに帰すべき事由で履行できなくなったときは、報酬の履行を拒めず(民法536条2項)、双方の責めによらないときは拒めます(同条1項)。届出漏れは依頼主の側、規約改正やエレベーターの長期停止は依頼主の責めとは言い切れない、というように結論が割れるので、原因ごとの扱いを先に書きます。
第◯条(物件の使用の適法性及び使用の停止)の例
1甲は、物件が、建物の管理規約その他の法令及び規則(以下「法令等」という。)により宿泊に使用できる状態にあること(住宅宿泊事業法に基づく届出を終えていることを含む。)を乙に表明し、事業の形態及び届出の番号を書面で示す。
2甲は、管理組合、行政機関その他から、物件を宿泊に使用することについて、停止、是正その他の申入れ、通知又は決議を受けたときは、直ちに乙に通知する。
3乙は、前項の通知を受けたとき、又は法令等に反するおそれがあると合理的に認めたときは、甲に説明を求めたうえで、業務の全部又は一部を停止できる。この停止は、乙の債務不履行にならない。
4停止の時点で確定している個別業務の料金は、第◯条(料金)及び第◯条(キャンセル)による。停止の原因が甲の責めに帰すべき事由によるときは、停止後の予約分にもキャンセルの定めを準用する。
第3項の「合理的に認めたとき」は、適法性を断定せず、疑いが具体的にあるときに説明を求めて止められる、という作りです。
賃貸の部屋で民泊を行う依頼主もいます。賃借人は、賃貸人の承諾なく転貸できず、違反して第三者に使用させたときは、賃貸人は契約を解除できます(民法612条)。表明の条に、承諾を得ているという一文を入れておけます。
共用部分の使用と入館のルールは、契約にどう書きますか?
共用部分は管理組合の管理する場所で、依頼主の持ち物ではありません。「共用部分は依頼主が許可する」と書くだけでは足りないので、建物のルールで許される範囲を、依頼主が書面で指定する形にします。
| 場面 | 決める人 | 契約に書くこと |
|---|---|---|
| オートロックの解錠 | 管理組合が方式を決め、番号やカードは依頼主が用意 | 目的外使用の禁止。解錠した扉から第三者を同時に入れない |
| エレベーター・作業の時間帯 | 管理組合(使用細則) | 養生や予約の費用の負担。時間帯の外の作業は業務の外。時間を理由とする遅れの責任の分け方 |
| 外部業者の入館の届出・名簿 | 管理組合・管理会社 | 届出の費用と手間の負担。名簿の提出について従事者の同意を得ること |
| 共用部分の汚損・破損 | 管理組合 | 直ちに報告し、管理人の指示で応急の措置。賠償は損害賠償の条による |
見落とされやすいのが名簿の提出です。従事者の氏名は個人情報で、取得するときは利用目的をできる限り特定し(個人情報保護法17条)、公表又は本人に通知する必要があります(同法21条)。名簿を管理組合に渡すことは第三者への提供にあたり、原則として本人の同意が要ります(同法27条)。従事者との契約に、「物件の管理者に氏名を提出することがある」と書いておくと慌てずに済みます(清掃スタッフとの業務委託契約書)。
国のガイドラインには、参考になる考え方があります。住宅宿泊管理業者は、従事者や再委託先で届出住宅に立ち入る者に、従業者証明書を携帯させます(住宅宿泊事業法の定め)。リネンの洗濯のみを行う者や車の運転手は対象に含まれませんが、携帯が望ましいとされています。清掃会社自身はこの義務を負う管理業者ではないのが普通ですが、「誰が入るのか分かるように」と求められたときは、会社名と氏名入りの証明書の携帯が、そのまま答えになります。
標識も同じです。住宅宿泊事業者は標識を掲げ(同法13条)、ガイドラインは、共同住宅では共用エントランスや集合ポストなどにも簡素な標識を掲示することが望ましく、分譲マンションでは掲示場所を管理組合と相談することが望ましいとしています。貼り替えや撤去を頼まれても、決めるのは依頼主と管理組合です。清掃会社は書面で指示された場合に、指示された物を指示された場所に掲示する作業にとどめます。
第◯条(共用部分の使用)の例
1乙の従事者が建物の共用部分を通行又は使用するときは、甲が書面で指定した入口、エレベーター、通路及び時間帯による。
2乙は、共用廊下、階段及び避難の経路並びにその付近に、物品を置かない。ただし、搬入出の作業中の短時間の一時置きで、通行及び避難の妨げにならないときは、この限りでない。
3乙は、入館に用いる暗証番号、カードその他の手段を、本契約の業務以外に使用せず、従事者以外に開示せず、解錠した出入口から第三者を同時に入館させない。
4乙の従事者が共用部分又はその設備を汚損又は破損させたときは、乙は、直ちに甲に報告し、管理組合又は管理人の指示に従って、応急の措置を行う。
第2項のただし書は、「一切置かない」と書くと、台車からリネンを下ろす数十秒も違反になってしまうことへの手当てです。避難の経路を妨げないことを軸にします。
リネンの搬入・搬出で、どんな問題が起きますか?
リネンは最もかさばる荷物です。費用の問題はリネン・消耗品の負担と精算のページで扱っていますので、ここでは建物のルールの問題を挙げます。
- 共用廊下への一時置き:避難の妨げとして規約違反になりやすく、盗難や汚損の心配もあります。一時置きは作業中の短時間に限ります。
- エレベーターと台車:壁や床の傷、他の住民の乗降の妨げが苦情になります。養生の要否と費用、使える時間帯を依頼主が指定します。
- 宅配ボックスや玄関前の受け取り:リネン業者が先に荷物を置いていくと、紛失したときの責任があいまいです。受け取りの場所と、保管責任の開始点を決めます。
- 共用部の物置・トランクルーム:専用使用権の範囲を超えるおそれがあります。置いてよい場所と物を依頼主が確認して指定します。
搬入の担い手も確かめます。依頼主とリネン業者の契約なら、清掃会社は受け取って運ぶ役です。清掃会社が手配するなら再委託になり、再委託と多層構造のページの承諾や責任の条が関わります。
作業時間の窓も計算しておきます。管理組合が外部業者の作業を認める時間帯があっても、民泊は宿泊者の退室からチェックインまでの短い時間に、入館、搬入、清掃、ゴミ出し、確認を終えなければなりません。次は説明用の仮の例です。
作業時間の窓の計算(説明用の仮の例)
余裕が25分なら、エレベーターの待ちが30分出ただけで間に合わない。遅れの原因が建物の側にあるときの責任と料金を、先に決めておく。
建物のルールが厳しいほど、遅れの原因が清掃会社の外にある場面は増えます。「エレベーターの停止、管理組合の指定時間、搬入の禁止など建物の側の事情による遅れは、清掃会社の責任としない」という趣旨の一文があると、争いを避けられます。逆に、許可の時間外に入館して止められたのは、清掃会社の側の原因です。チェックイン時刻の扱いは、依頼とキャンセル料、入室できなかった場合のページと同じ発想で、原因を分けます。
ゴミ置場は、どこの何を使ってよいのですか?
民泊のゴミは、建物のルールと衝突しやすい分野です。国のガイドラインは、住宅宿泊事業に起因するごみは、廃棄物処理法に従い、事業活動に伴って生じた廃棄物として住宅宿泊事業者が責任をもって処理するとしています。一方、マンションのゴミ置場は、多くの場合、住民の家庭ごみのために管理組合が運営しており、事業のごみを置いてよいかは、管理組合と自治体の運用で決まります。
二つのゴミの流れ
運用は建物と自治体で違います。契約では、確認を依頼主に置き、清掃会社には書面で指示してもらいます。
清掃会社が「所定の場所に置く」と引き受けるとき、その場所に民泊のごみを置いてよいかを確かめる責任は、排出する事業者である依頼主にあります。ここを書かないと、「置いてはいけない場所だった」と指摘されたとき、置いた者が責任を問われます。
使用細則には、ゴミは指定日の朝に所定の集積所に出す、という定めがよく置かれます。宿泊者が毎日のように入れ替わると、指定日まで出せないゴミが室内や共用部に溜まり、悪臭や害虫が苦情の原因になります。収集日までは室内の指示された場所に保管し、保管したことを報告する手順を決めます。持ち帰りの可否はゴミと廃棄物処理法のページを参照してください。
第◯条(ゴミの排出)の例
1甲は、ゴミの分別、排出の場所、曜日及び時間帯を、建物のルール及び自治体の定めに沿って書面で乙に指定する。甲は、指定した場所が、物件から生じる事業活動に伴うごみを置ける場所であることを、管理組合、収集の委託先その他に確認する。
2乙は、前項の指定に従って分別し、所定の場所に置く。指定のない場所及び時間帯には置かない。
3指定の場所に置けないときは、乙は、物件内で甲が指示する場所に保管し、甲に報告する。保管が収集日の翌日以降に及ぶときは、甲に指示を求める。
4乙は、ゴミを物件及び建物の外に持ち出さない。収集の依頼及び処分は、甲が行う。
第1項の後段が、確認の責任を依頼主に置く部分です。置いた場所と時刻の写真は、後で「誰が置いたか」が問題になったときの記録になります(写真報告と忘れ物の扱い)。
近隣から苦情が来たとき、清掃会社は何をしますか?
清掃会社の役割は、受け付けて、記録して、依頼主の窓口へ取り次ぐところまでです。法律が、苦情対応を担う者を決めているからです。住宅宿泊事業法10条は、住宅宿泊事業者に、周辺住民からの苦情や問合せへの適切かつ迅速な対応を求めています。ガイドラインは、深夜早朝を問わず常時応対すること、宿泊者が滞在していない間も対応すること、緊急のときは警察署や消防署に連絡して自らも現場へ急行することを挙げます。家主不在の民泊では、この業務を住宅宿泊管理業者に委託します(同法11条1項)。苦情の窓口は、事業者か管理業者にあり、清掃会社は通常そのどちらでもありません。
それでも廊下で住民に声をかけられることはあります。従事者が善意で謝ると「責任を認めた」と受け取られ、宿泊者に注意しに行けば管理業の領域に踏み込みます。苦情は二種類に分けます。
| 種類 | 例 | 清掃会社の役割 |
|---|---|---|
| 宿泊者の行為への苦情 | 夜間の騒音、ゴミの出し方、共用部でのたばこ | 受け付けて記録し、取り次ぐ。責任の判断も宿泊者への注意もしない |
| 清掃作業そのものへの苦情 | 早朝の作業音、台車の音、廊下での話し声、ゴミを出す時間 | 依頼主と協議して、作業の方法を改める |
一つ目の苦情では、責任を認める言い方で謝ること、改善や賠償を約束すること、宿泊者に直接注意することをしません。宿泊者への注意は運営代行の業務で、引き受けると管理業との線引きがあいまいになります。宿泊者の氏名を「あの部屋は誰か」と聞かれても、本人の同意なく教えることはできません(個人情報保護法27条)。
苦情を受けたときの動き
- 受ける「承りました。担当に伝えます」と答える
- 聞く日時、場所、内容を、答えてもらえる範囲で聞く
- 伝える依頼主が指定した連絡先にすぐ連絡する
- 記録する受けた時刻と、伝えた時刻を残す
火災・漏水・人の危険があるときは、まず通報し、依頼主にも連絡します。
第◯条(苦情等の取次ぎ)の例
1乙の従事者は、業務の遂行中に、建物の居住者その他の第三者から、物件の使用又は宿泊者の行為に関する苦情、問合せ又は要望(以下「苦情等」という。)を受けたときは、これを受け付けたうえで、甲が指定する連絡先に速やかに取り次ぐ。苦情等への対応は、甲が行う。
2乙の従事者は、前項の場合に、責任の有無の判断、賠償その他の約束、宿泊者への注意その他の甲の業務に属する対応をしない。
3乙は、苦情等を受けた日時、場所、内容、特定ができる範囲の相手方の情報及び取り次いだ日時を記録し、甲に報告する。
4乙の業務の方法(作業の時間、物品の運搬の方法、共用部分の使用その他)に関する苦情等を受けたときは、乙は、甲と協議のうえ、作業の方法の変更その他の必要な措置をとる。
第2項が役割を取次ぎに限る部分、第4項が清掃会社が直すべき苦情を引き受ける部分です。
よくある失敗と、直し方
民泊清掃の契約書は、賃貸借、サブリース、施設の利用規約など、別の契約書から条文を持ってきて作られることがあります。当事者の立場が違うので、清掃会社にとって意味が変わります。
書き方の例(一般的な例) 建物のルールと近隣対応
近隣との紛争
物件を使うのは宿泊者と依頼主です。借りる側の条項を移すと、宿泊者の騒音まで清掃会社が負う読み方になります。賠償は、契約違反や自分の過失の場合に負うのが原則です(民法415条、709条)。
管理規約の遵守
見たことのないルールは守れません。渡す責任は、規約を持つ依頼主に置きます。
ゴミの排出
「所定」を誰が決めるかが空白だと、家庭ごみ用の置場に出して苦情を受けたとき、出した者の責任になります。
共用部分の清潔
共用部分の日常の維持は管理組合の領域です。そのまま書くと、建物全体の共用部の清掃を引き受けた読み方になります。
苦情への違約金
宿泊者の騒音でも清掃会社が払う読み方になります。違約金は賠償額の予定と推定されますが(民法420条3項)、行為に結び付かない苦情まで広げると過大になりがちです。
運営代行の契約の「業務一覧」を、そのまま清掃の契約書の別紙に流用する例もあります。一覧には、苦情の受付、宿泊者への是正の要請、近隣住民との関係調整が入っていることがあり、別紙が優先する書き方だと、業務が一気に広がります。本文と別紙の優先順位を書き、別紙には清掃の作業だけを載せます(業務範囲)。
ヒヤリングで確認すること
ヒヤリングで確かめる事項(一般的な例) 建物・規約・近隣対応
- 分譲か賃貸か。管理会社や管理人はいますか。規約を持つ管理組合の有無と連絡先を知るためです。賃貸なら、賃貸人の承諾の有無も確かめます(民法612条)。
- 民泊の形態は住宅宿泊事業か旅館業の許可か。家主居住型か不在型か。規約の扱いが形態で分かれるためです。
- 規約・使用細則に民泊の定めはありますか。総会で改正の議題は出ていませんか。契約が続く前提が崩れるおそれを見極め、写しの交付も依頼するためです。
- 外部業者の入館の届出、誓約書、従事者の名簿は必要ですか。費用の負担者を決め、従事者の同意を準備するためです。
- 入館の方法、許される時間帯、エレベーターの養生や台車の決まりは。作業時間の窓の計算と、入館手段の管理の条のためです。
- リネンの搬入出の方法、一時置きの場所、リネン業者との契約の当事者は。搬入の責任の区分と、再委託の要否を決めるためです。
- ゴミ置場の使用は認められていますか。事業系の収集契約はありますか。確認の責任を依頼主に置くための前提です。
- 苦情の窓口と、過去の苦情の有無は。取り次ぎ先を契約に書き、従事者に伝えるためです。
答えは別紙(建物のルールの写しと、依頼主が指定する入口・時間帯・置き場所・連絡先)にまとめると、更新時の見直しが楽になります。
まとめ:起きがちなこと
どの場面も出発点は同じで、建物のルールは依頼主と管理組合の間にあるのに、作業は清掃会社が行います。つなぐのは「渡す」「知らせる」「指定する」の三つで、これを依頼主の義務として置くことが基本です。損害賠償の上限と保険のページとあわせて設計します。
よくあるご質問
管理規約は、清掃会社も守らなければなりませんか?
管理規約は管理組合と区分所有者のルールで、清掃会社は当事者ではありません。ただし、依頼主との契約で守る範囲を決めるのが一般的です。依頼主が関係部分の写しを渡し、改定を施行前に通知し、清掃会社は渡された範囲で守る、という形にします。
規約で民泊が禁止された物件の清掃を、続けてよいのですか?
清掃会社が適法性を判定する必要はありませんが、依頼主に適合性を表明させ、停止や是正の申入れを受けたら通知してもらい、通知があれば業務を止められる、という条項を置きます。停止後の予約分の料金は、原因が依頼主の側にあるかで分けて決めます。
リネンを共用廊下に一時的に置いてもよいですか?
避難の経路を妨げる置き方は、規約や使用細則に反することが多いです。作業中の短時間の一時置きで、通行と避難の妨げにならない場合に限り認め、長時間の置き配や物置の使用は依頼主が書面で指定した場所に限る、と契約で決めます。
民泊のゴミを、マンションのゴミ置場に出してよいですか?
民泊のごみは事業活動に伴うごみとして事業者が処理する扱いで、家庭ごみ用の置場に置けるかは、管理組合と自治体の運用によります。確認は依頼主が行い、場所・曜日・分別を書面で指定してもらい、清掃会社は指定どおりに置く、という分担にします。
住民から宿泊者の騒音について苦情を言われたら、どう答えますか?
「承りました。担当に伝えます」と答え、日時・内容・相手の連絡先を可能な範囲で聞き、依頼主の窓口へすぐ取り次ぎます。責任を認める発言や賠償の約束、宿泊者への注意はしません。作業の音など清掃会社自身の作業への苦情は、依頼主と協議して作業の方法を改めます。
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本ページは一般的な情報提供です。届出・登録・許可の運用は、所管の行政機関や自治体によって異なることがあります。紹介している書き方は、民泊・宿泊施設の清掃に関する一般的な契約実務を整理した例であり、特定の事業者の契約書を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 民泊制度ポータルサイト(観光庁) / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)