遺品整理・生前整理・不用品の片付けの契約書

片付けは、他人の持ち物を持ち主の代わりに手放す仕事です。契約書では、誰と契約するか、どう運ぶか、見つけた物をどう返すかを先に決めます。

トップページ › 遺品整理・生前整理・不用品の片付けの契約書
相続人の一人の依頼で全部を処分したあと、他の相続人から形見が捨てられたと言われる。この行き違いは、依頼者の表明と、処分しない物のリストで防げます。

このページの要点

  • 遺品は相続人の共有(民法898条1項)。依頼者が処分を決められる立場かを入口で確認し、全員の了解を表明してもらう。
  • 家庭の不用品の収集・運搬には市町村長の許可が必要(廃棄物処理法7条1項)。自社で運ばない設計や、家電4品目の別扱いも契約に落とす。
  • 見積りは部屋ごとの写真で固定し、増えた分は作業前に示して承諾を得る。全部免責は消費者契約で無効(消費者契約法8条1項)。
  • 買取を伴うときは、古物営業の許可と、訪問購入の書面・8日間のクーリング・オフに注意する。

片付けの契約書は、「誰と」「何を」「どこへ」「見つけた物は」の四つを先に決める

遺品整理・生前整理・不用品の片付けは、民泊の清掃やハウスクリーニングと同じ「家の中に入って行う作業」に見えますが、契約書の論点は大きく違います。清掃は汚れを落とす仕事ですが、片付けは他人の持ち物を、持ち主の代わりに、運び出して手放す仕事です。持ち主が亡くなっていたり、施設に入っていたり、遠方に住んでいたりすることも多く、依頼してきた人が本当に処分を決められる人なのか、という入口の問題が最初に出てきます。

このページでは、片付けの請負契約や利用規約を作るときに、先に決めておくとよい四つを順に整理します。

  • 誰と契約するか:依頼者が処分を決められる立場にあるか。相続人が複数いる場合や、相続放棄を考えている場合の注意。
  • 何をどこへ運ぶか:家庭から出る不用品と、店舗・事務所から出る不用品で、運び方の許可や手続が変わる。自社で運ばない設計もある。
  • 見積りの基準と追加料金:見積りの時点で見た部屋の状態を写真で固定し、あとで量が増えたときの扱いを決める。
  • 見つけた物の扱い:現金・通帳・印鑑・権利関係の書類などを見つけたときの手順と、「処分しない物」の事前リスト。

買取を伴う場合(残った家財を買い取る場合)は、古物営業法と訪問購入の規律が加わります。これは最後の節で、概略だけを整理します。なお、民泊の清掃で出るゴミを持ち帰ってよいかという問題は、民泊清掃のゴミ・廃棄物と残置物で扱っています。ここで扱うのは、片付けそのものを請け負う場合です。

誰と契約するか:依頼者は処分を決められる人か

片付けの契約で、最初に確かめるのは依頼者の立場です。品物の持ち主と依頼者が同じ人であれば問題は小さいのですが、遺品整理では、持ち主が亡くなっているため、相続の問題が入ってきます。

遺品は相続人が共有している

相続人が数人いるときは、相続財産はその共有になります(民法898条1項)。共有物に変更を加えるには、他の共有者の同意が必要です(同法251条1項。ただし、形状や効用の著しい変更を伴わないものは除かれます)。家財を捨てる、売るという行為は、この「変更」の問題として考えることになります。相続人のうち一人だけが依頼してきたときに、その人の指示で全部を処分してしまうと、あとから他の相続人が「あの物は形見として残してほしかった」と言い出す余地が残ります。

そのため、契約の入口で、次のことを確かめておく書き方が多く見られます。

ヒヤリングで聞く問い(一般的な例) 依頼者の立場

  1. 依頼者は、物の持ち主ご本人ですか。それとも相続人ですか。持ち主本人なら、処分の可否は本人が決められます。相続人なら、他に相続人がいるかどうかを確かめます。
  2. 相続人は何人いて、処分について全員の了解がありますか。全員の了解がある場合は、その旨を依頼書に書いてもらいます。誰か一人が代表して依頼するなら、他の相続人から代表を任された旨の書面があるかを確かめます。
  3. 相続の放棄や限定承認を検討していますか。検討中の場合、財産を処分すると相続を承認したものとみなされる可能性があります(民法921条1号)。作業の前に、依頼者が自分で判断しているかを確認します。
  4. 建物は賃貸ですか、持ち家ですか。賃貸なら貸主・管理会社への連絡は済んでいますか。賃貸なら、退去の期限や原状回復の範囲が作業の期限を決めます。貸主の物が室内に残っていないかも確かめます。
  5. 作業に立ち会える人はいますか。いない場合、鍵はどう受け渡しますか。立会いなしで進める場合は、写真による報告の方法と、見つけた貴重品の引渡し方法を決めておきます。

遺品整理の依頼を受けるときの、入口の確認の例です。回答は契約書の前文や依頼者の表明の条にそのまま反映します。

相続放棄をした人は、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。ただし、放棄の時に相続財産を現に占有しているときは、相続人などに引き渡すまで、自己の財産におけるのと同一の注意で保存する義務があります(同法940条1項)。放棄を考えている依頼者が、保存の範囲を超えて処分をお願いしてくる場面では、契約の相手として進めてよいかを慎重に見ます。この判断は、作業を請け負う側が法的に結論を出す事柄ではなく、依頼者が自分で確認したうえで、その確認を契約書に書いてもらう、という整理にとどめるのが安全です。

本人が依頼する生前整理でも確かめること

生前整理では、持ち主本人が依頼者ですが、高齢で判断が揺らぐことがあります。契約を結んだ時点で本人に意思能力がなかったと後から判断されると、その契約は無効になります(民法3条の2)。作業の途中で、本人が「それは捨てないで」と言ったのに、同席した家族の指示で捨ててしまう、という行き違いは、誰の指示で何を決めるかを契約で定めておけば防げます。家族が代理で契約する場合は、代理権があることを確かめます(同法99条)。

片付け業務請負契約 第◯条(依頼者の表明)

1甲は、本契約の締結及び本件物品の処分について、本件物品の所有者であること、又は所有者その他本件物品の処分に権限を有する者の全員から同意を得ていることを、乙に対して表明し、保証する。

2甲が前項の同意を得ていない者がいると乙が知ったとき、又は乙が前項の表明に疑いを持つに足りる事情を認めたときは、乙は、作業を中断し、甲に確認を求めることができる。

3第1項の表明が事実に反したことにより乙に生じた損害については、甲が賠償する。乙は、甲の表明を信頼して行った作業について、第三者から請求を受けたときは、甲に対し、その対応を求めることができる。

依頼者の表明と、作業の中断権を組み合わせた条の例です。表明保証は、事実に反したときの責任の所在を明らかにするためのもので、確認の手間を省く条ではありません。

運ぶ・捨てるの線:家庭の不用品、店舗・事務所の不用品、家電4品目

片付けの契約書で最も誤りが起きやすいのが、「集めた物をどうやって処分場まで運ぶか」の部分です。不用品が廃棄物(ごみ、粗大ごみ、不要物であって固形状又は液状のもの)に当たるとき、廃棄物処理法の規律が及びます(同法2条1項)。ここでは三つの場面に分けて考えます。

何がどこから出たかで、運び方が変わる

家庭から出る不用品(遺品・生前整理・引越しの片付け)事業活動に伴うものではないので、産業廃棄物には当たらず、一般廃棄物として扱われます(廃棄物処理法2条2項)。一般廃棄物の収集・運搬を業として行うには、区域を管轄する市町村長の許可が必要です(同法7条1項)。許可を持たない片付け業者は、自社で運ばない設計にし、運搬は依頼者が許可業者と直接契約する形を取る(運搬を受けて許可業者へ再委託する形は取れない)
店舗・事務所から出る不用品事業活動に伴って生じた廃棄物なので、排出した事業者が自らの責任で処理します(同法3条1項)。種類によって産業廃棄物になるものとならないものがあります。産業廃棄物なら、収集運搬に都道府県知事の許可が要り、マニフェストの手続がかかる(同法14条1項、12条の3)
エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機など家電リサイクル法の対象になる機器があります(特定家庭用機器再商品化法2条4項、施行令1条)。排出者が適切に引き渡し、料金を支払う責務があります(同法6条)。小売業者の引取りの仕組みに乗せるのが基本。一般の可燃・不燃のごみと同じ扱いにしない

表は目安です。個別の品物が産業廃棄物かどうか、一般廃棄物の許可の運用や手数料は、市町村・都道府県によって異なります。契約書では、運び方を「確認のうえ決める」ではなく、方法を一つに決めて書きます。

許可がなければ運べない、という点を契約に落とす

一般廃棄物の収集・運搬を業として行うには市町村長の許可が必要で、許可を受けた収集運搬業者は、その収集・運搬を、他の業者へ再委託することも原則としてできません(一般廃棄物にも産業廃棄物にも、再委託を禁じる規定があります)。つまり、許可のない片付け業者が仕事を丸ごと受けて、運搬だけを許可業者に回す形は成り立たず、許可業者に運搬を依頼するのは、依頼者(排出者)自身であるのが原則です。無許可で業として収集・運搬をした者は、5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金に処せられ、又は併科されます(同法25条1項1号)。「不用品回収」という看板だけで、許可の有無を契約書にも広告にも示さない業者を見かけますが、依頼する側の立場でも、無許可の業者に出した結果、不法投棄に至ると、依頼者自身も問題に巻き込まれます。

片付けを請け負う側の契約書では、次の三つの形のどれを取るかを、冒頭の定義で決めます。

片付けの運搬の三つの形
形契約上の位置づけ契約書に書くこと
許可を自ら持つ自社で収集・運搬を行う許可の種類と区域、許可番号を示す書面の交付、市町村の定める手数料の額を超える料金を受けられない場合があること(自治体への確認事項)
許可業者に委託する片付け(仕分け・搬出)と運搬を分け、運搬は許可業者が依頼者から直接受ける。自社は許可業者を紹介するにとどまり、運搬を受けて再委託はしない搬出までが自社の作業で、運搬・処分は別の契約になること。委託先の名称と許可の確認方法。委託先の責任と自社の責任の線
依頼者が自ら出す依頼者が自治体の収集に出す、又は持ち込む分別・袋詰め・指定の場所への置き出しまでを業務とする。収集日に間に合わせる責任は誰か

どの形を取るにしても、「廃棄物として手放す物」と、「リユースやリサイクルに回す物」を分けて数える必要があります。まだ使える物を無償で引き取ってどこかへ運ぶと、行為の態様によっては廃棄物の収集運搬と見られることがあります。この線引きは取扱いが自治体の運用に委ねられる部分が大きく、契約書だけで解決することはできないので、見積書の品目欄に「処分」「買取」「寄付」「依頼者が持ち帰る」の区分を設けて、品物ごとに決めておく書き方が現実的です。

店舗・事務所の片付けでは、産業廃棄物の線を確かめる

事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類のほか、政令で定めるものが産業廃棄物です(同法2条4項1号)。政令には、金属くず、ガラスくず・陶磁器くず、ゴムくずなどが業種を問わず挙げられています。一方で、紙くず、木くず、繊維くずは、建設業や製紙業など一定の業種に係るものに限られています(施行令2条)。そのため、事務所の金属製の棚は産業廃棄物の「金属くず」、木製の机は多くの業種では事業系の一般廃棄物、という具合に、同じ事務所の中で区分が分かれることがあります。

産業廃棄物の運搬・処分を他人に委託する事業者は、管理票(マニフェスト)を交付する義務を負います(同法12条の3第1項)。排出事業者は店舗・事務所の事業者であり、片付け業者が産業廃棄物の収集運搬の許可(同法14条1項)を持たないときは、運搬を引き受けることができません。この場合、産業廃棄物の運搬は、排出事業者である店舗・事務所の事業者が、許可業者と直接契約して頼む形になります。許可業者が受けた運搬を別の業者へ再委託することも、原則として禁じられています。契約書には、廃棄物の区分ごとに運搬の形を書き分けた別紙を付けるのが分かりやすい方法です。

家電4品目は、一般のごみの扱いにしない

エアコン(ウィンド形、又は室内ユニットが壁掛け形若しくは床置き形のセパレート形に限る)、テレビ(一定の方式のもの)、電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機は、特定家庭用機器として家電リサイクル法の対象です(施行令1条)。小売業者は、自分が売った機器や、買替えの際の同種の機器の引取りを求められたとき、正当な理由がなければ引き取らなければなりません(同法9条)。排出者は、料金を支払って、収集・運搬をする者や再商品化等をする者に適切に引き渡す責務を負います(同法6条)。

片付けの契約書では、次の二点を書いておくと、搬出後のトラブルを減らせます。ひとつは、家電4品目は、一般の可燃・不燃の処分の見積りとは別の欄で扱い、リサイクル料金と運搬料金が別にかかる場合があると説明すること。もうひとつは、依頼者が他の業者のほうが安く引き取ると考えて、無許可の回収に出してしまうことがないよう、4品目の引渡し先を、引取りの仕組みに乗せる、買い取る、依頼者が自ら引き渡す、のいずれかに定めることです。

見積りの写真を基準にする:追加料金と「自分で片付けても減額しない」条項

片付けの料金は、荷物の量で決まります。見積りの時点では、押入れの奥、天袋、物置、庭の物、ベランダの物までは見えていないことが多く、作業日に量が増えるのが典型的なトラブルの型です。そこで、見積りの根拠を、見積り時の部屋ごとの写真と、荷物の量の見立てで固定します。

見積りから契約までの手順(一般的な例)

  1. 現地の確認部屋ごと、収納ごとに写真を撮る。開けていない収納、鍵のかかった部屋、物置、庭やベランダの荷物の有無を確かめ、確認できなかった範囲を書き出す。
  2. 量と作業条件の見立て荷物の量の見立て(収集車両の積載量の目安、作業の人数と時間)と、搬出経路(階段、エレベーター、駐車の可否)を見積書に書く。
  3. 対象外・別料金の区分家電4品目、大型の家具、危険物、特殊清掃を要する状態の部屋などを、別欄にして金額を分ける。
  4. 見積書の位置づけ写真と見積書を契約書の別紙とし、契約後の変更は書面又はメッセージで承認を得る方式にする。
  5. 作業日の再確認作業前に、見積り時と状態が変わっていないかを依頼者(又は立会人)と確認し、変わっていれば作業前に追加料金を提示する。

書き方の例(一般的な例) 追加料金の書き方

見積りより量が増えたとき

よくある書き方見積額は概算であり、作業の内容によって変動する場合がある。
整えた書き方見積書別紙の写真に写っていない収納、物置その他の場所に荷物があり、見積りの前提と異なる量となるときは、乙は作業前に、増えた量と追加料金を甲に書面又はメッセージで示し、甲の承諾を得たうえで作業する。承諾が得られないときは、見積りの範囲の作業のみを行う。

「変動する場合がある」だけでは、依頼者はいくらまで増えるのか分かりません。作業前に示し、承諾を得る手順と、承諾が得られない場合の逃げ道を書きます。

依頼者が一部を自分で片付けたとき:作業量が減った場合の料金

見積りのあとで、依頼者が一部を自分で処分して、作業日に料金の減額を求めてくることがあります。見積りが人員と時間と車両の手配を前提に組まれているため、一部が減っても、費用がその分だけ減るとは限りません。この場面に備えて、次のように書いておく例があります。

片付け業務請負契約 第◯条(作業量が減った場合)

1見積書の作成後に、甲が自ら本件物品の一部を処分したことその他の事由により作業量が減少したときは、乙は、減少した量に応じて、見積書別紙に定める単価に基づき、料金を減額する。ただし、乙が既に手配した人員、車両その他の費用で、作業量の減少によっても解消できないものがある場合は、その費用を減額の対象としない。

2甲は、前項の減少が見込まれるときは、作業日の◯日前までに、乙に通知する。前項ただし書の費用は、乙の手配の状況を示して説明する。

「一切減額しない」と書くのではなく、減額の計算の方法と、減額できない費用の範囲を示す形にした例です。

依頼者が消費者である場合、「一切減額しない」「理由のいかんを問わず返金しない」といった書き方は、法令中の任意規定の適用による場合に比べて消費者の義務を加重し、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものとして、消費者契約法10条により無効とされる余地があります。事業者どうしの契約なら有効に書ける場合でも、一般の家庭を相手にする片付けでは、減らない費用の中身を具体的に説明できる書き方にしておくのが現実的です。

なお、依頼者の住居を訪問して見積りをし、その場で契約するときは、特定商取引法の訪問販売に当たる可能性があります(同法2条1項1号)。書面の交付やクーリング・オフ、住居で契約を請求した場合の適用除外の整理は、ハウスクリーニングの利用規約と契約書の訪問販売の節にまとめてあります。

貴重品と「処分しない物」:見つけたときの手順を先に決める

片付けの現場では、現金、通帳、印鑑、保険証券、権利書類、貴金属、写真、手紙、デジタル機器などが、思わぬ場所から出てきます。これらを「ゴミとして捨ててしまった」という苦情は、金額の大きさにかかわらず、関係の修復が難しくなります。契約書の側では、次の三段で備えます。

  1. 事前に「処分しない物」を聞き出す:依頼者に、持ち出したい物、残す部屋、触れてほしくない収納を、チェック式の別紙で書いてもらう。
  2. 貴重品の範囲を定義する:現金、通帳、キャッシュカード、印鑑、有価証券、貴金属、権利を示す書類、鍵、故人の手帳・手紙・写真など、「見つけたら作業を止める物」を列挙する。
  3. 見つけたときの手順を決める:作業を中断し、その場の状態を写真に撮り、依頼者に連絡して、依頼者の指示を受けて引き渡す。引き渡した日時と物の内容を記録する。

請け負った作業の中で受け取った物は、依頼者に引き渡す義務があります。民法646条1項は、委任事務の処理に当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡す義務を受任者に課しており、片付けのように委任に近い性質を持つ作業の整理では、この考え方が参考になります。

ヒヤリングで聞く問い(一般的な例) 処分しない物のリスト

  1. 残してほしい物(形見・写真・手紙・趣味の品)はありますか。どの部屋、どの収納にありますか。場所と品目を別紙に書いてもらい、作業前に現場で対象に付箋を貼るなど、目印を付ける方法を決めます。
  2. 通帳・印鑑・現金・権利書類・保険証券がありそうな場所はありますか。あると言われた場所は最初に確認し、見つけたら依頼者に引き渡します。見つけ次第、作業を止めて連絡する範囲を定めます。
  3. パソコン・スマートフォン・外付けの記録媒体は処分しますか。個人情報が入っている機器は、処分の前に依頼者が確認することを条件とします。消去の作業を請け負うかどうかは、業務範囲として別に決めます。
  4. 故人の持ち物のうち、他の親族が引き取りたいと言っている物はありますか。親族間の了解は依頼者が取るものとし、契約書では「依頼者が全員の了解を得ている」という前提の表明にとどめます。

遺品整理・生前整理の依頼を受けるときのヒヤリングの例です。

「一切補償しない」条項は、そのままでは使えない

貴重品や思い出の品が紛失・破損しても一切責任を負わない、という条項は、事業者の債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項として、消費者契約では無効です(消費者契約法8条1項1号)。故意又は重大な過失による場合に責任の一部を免除する条項も無効(同項2号)、不法行為についても同様です(同項3号・4号)。軽い過失による責任の一部を免除するときは、その条項が、重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていなければ無効になります(同条3項)。

書き方の例(一般的な例) 免責条項の書き方

作業中の紛失・破損

よくある書き方乙は、作業中に生じた紛失、破損その他一切の損害について、責任を負わない。
整えた書き方乙は、乙、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失により、本件物品又は甲の所有物に損害を与えたときは、その損害を賠償する。乙は、作業中に本件物品又は甲の所有物に損害を与えたときは、乙、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、甲が事前に「処分しない物リスト」で申告した物に限り、時価相当額を上限として賠償する。申告のない物の価値は、乙が知り得ないため、賠償の対象としない。

全部免責は、消費者契約では無効です。事前の申告制にして、上限を定める文の中に「乙、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き」と入れておけば、責任の範囲を予測できます。

キャンセル料は、手配の実費に応じて段階を付ける

片付けのキャンセルは、日程が近づくほど、人員・車両・処分先の手配が済んでいるため、損害が大きくなります。そこで、キャンセルの時期に応じて、料金の割合を段階的に決める書き方が一般的です。ここで、請負契約では、請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約を解除できる、という民法641条の規定が出発点になります。契約書は、この「損害」の中身を、時期ごとに具体化するものと考えると整理しやすくなります。

キャンセル料の段階の考え方(割合は伏せた一般的な例)
時期手配の状況請求の考え方
日程が十分先人員・車両は未確定原則として請求しない、又は事務の実費に限る
作業日の数日前人員・車両を仮押さえ押さえた分の実費相当、又は所定の割合
作業日の前日人員・車両・処分先を確保確保に要した費用と、他の仕事に振り替えられなかった損失の範囲で所定の割合
作業日の当日・作業開始後移動・搬出が始まっている実施した作業の割合分と、手配の実費。所定の上限の割合

依頼者が消費者のときは、解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項のうち、同種の消費者契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分は無効です(消費者契約法9条1項1号)。また、事業者は、消費者から説明を求められたときは、算定の根拠の概要を説明するよう努めなければなりません(同条2項)。したがって、「当日は一律で全額」と書くより、手配の実費と他の仕事に振り替えられなかった損失の範囲を、時期ごとに説明できる形にしておく方が、条項として支えやすくなります。

民泊の清掃のキャンセル料の段階は、依頼の受け方とキャンセル・入室できなかったときで整理しています。片付けは、入居の日程に縛られるのではなく、退去の期限や相続の手続の期限など、依頼者側の日程の事情で動くことが多く、延期の申出が多いという違いがあります。延期は、キャンセルと同じ表に入れるのではなく、「延期は一度に限り、新しい日程を示す」「延期後のキャンセルは前の日程を基準にする」のように別の条に分けると、運用しやすくなります。

買取を伴う場合:古物営業法と訪問購入の概略

片付けの途中で、残った家財の一部を買い取る、あるいは買取代金を作業料金から差し引く、という形を取る業者もいます。この場合は、片付けの請負に加えて、物を買い取る契約が入るため、別の規律が重なります。詳細は、別のガイドで扱う古物の買取の論点に譲り、ここでは契約書の設計に関わる部分だけを挙げます。

  • 古物(一度使用された物品など)を売買する営業は、都道府県公安委員会の許可が必要です(古物営業法2条1項・2項1号、3条)。
  • 古物を買い受けるときは、相手方の住所・氏名・職業・年齢の確認など、相手方の真偽を確認する措置を取る必要があります。例外は、国家公安委員会規則で定める金額未満の取引などです(同法15条)。
  • 古物を受け取ったときは、取引の年月日、品目、数量、特徴、相手方の住所・氏名などを帳簿等に記載します(同法16条)。
  • 訪問して物品を買い取る場合は、特定商取引法の訪問購入の規律が重なります。勧誘に先立つ氏名等の明示(同法58条の5)、勧誘を要請していない者への勧誘の禁止(同法58条の6)、書面の交付(同法58条の7、58条の8)、書面を受け取った日から8日間のクーリング・オフ(同法58条の14)が主な項目です。

訪問購入の対象になる物品には、除外があります。自動車、家庭用電気機械器具(携行が容易なものを除く)、家具、書籍、有価証券、レコード等は、政令で除かれています(特定商取引法施行令34条)。つまり、大型の家具や大型の家電の買取には訪問購入の規律はかかりませんが、貴金属、衣類、携行が容易な小型の機器などの買取にはかかり得ます。さらに、依頼者が自分の住居で買取契約の締結を請求した場合は、一部の規定が適用されません(同法58条の17第2項1号)。

書き方の例(一般的な例) 買取と処分の料金の書き方

買取代金と作業料金の関係

よくある書き方作業料金から買取代金を相殺して請求する。
整えた書き方作業料金(搬出・運搬・処分)と、買取代金(品目ごとの買取額)を、見積書で別の欄に分けて書く。支払は、両者の差額を支払うか受け取るかを明示し、買取分については、品目・価格・引渡時期を記載した書面を交付する。

買取分は物品の売買契約、片付け分は役務の契約として、記載すべき事項が違います。一枚の見積書に混ぜず、欄を分けておくと、書面の交付や取消しの場面で整理しやすくなります。

買取の価格を作業料金から差し引く形は、「実質無料で片付けます」という広告にもつながりますが、買取の対象が実際には安価な物品で、料金の大部分を依頼者が負担する設計だと、表示と実態の食い違いが問題になります。広告の表示は、見積書に載せる内容と一致させます。

起きがちなこと:片付けの契約で、あとから争いになる場面

片付けの契約書は、作業の中身よりも、誰が決め、何を手放し、見つけた物をどう返すかを決める書類です。民泊の清掃のように、同じ物件に繰り返し入る継続の関係とは違い、一度の作業が終われば関係が終わるため、あとから争いになったときに頼れるのは、作業前の写真、別紙の申告書、引渡しの記録といった書き残した証拠です。条文の上では、廃棄物の運搬の許可(廃棄物処理法7条1項、14条1項)、消費者契約法の無効規定(8条、9条、10条)、買取の規律(古物営業法、特定商取引法の訪問購入)が主な枠になりますが、実務の安定は、入口の確認と、作業中の記録で決まります。

よくあるご質問

遺品整理の依頼は、相続人の一人からの依頼で受けてよいですか。

相続人が複数いるときは、相続財産はその共有に属し(民法898条1項)、共有物に変更を加えるには他の共有者の同意が必要です(同法251条1項)。一人からの依頼であっても、他の相続人の了解を得ている旨の表明を契約書に書いてもらい、了解が得られていないと疑われる事情があるときは作業を中断できる条を置いておく書き方が多く見られます。

自社のトラックで不用品を処分場まで運んでもよいですか。

家庭から出る不用品は一般廃棄物で、その収集・運搬を業として行うには、区域を管轄する市町村長の許可が必要です(廃棄物処理法7条1項)。許可がなければ、依頼者が許可業者と直接契約して運んでもらう形にするか、依頼者が自ら出す形にします。無許可で業として行うと、5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金に処せられ、又は併科されます(同法25条1項1号)。

見つけた現金や通帳は、どう扱えばよいですか。

見つけた時点で作業を止め、状態を写真に撮り、依頼者に連絡して、依頼者の指示で引き渡すのが基本です。契約書には、貴重品の範囲、見つけたときの手順、引渡しの記録の取り方を書いておきます。請け負った作業の中で受け取った物を依頼者に引き渡す義務は、民法646条1項の考え方が参考になります。

「作業中の紛失・破損は一切責任を負わない」と書いてもよいですか。

依頼者が消費者の場合は、事業者の債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項は無効です(消費者契約法8条1項1号)。故意・重大な過失の場合の一部免除も無効(同項2号)で、軽過失による責任を一部免除するときは、その条項が軽過失にのみ適用されることを明らかにする必要があります(同条3項)。上限を定める文そのものの中に、事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除く旨を入れ、事前の申告制と組み合わせる書き方が考えられます。

買取を伴うときに、最低限そろえるものは何ですか。

古物の買取には都道府県公安委員会の許可が必要で(古物営業法3条)、買取のときの相手方の確認(同法15条)と帳簿への記載(同法16条)が求められます。訪問して買い取る場合は、特定商取引法の訪問購入の規律(58条の5から58条の8まで、58条の14)もかかります。ただし、自動車、家具、書籍、大型の家庭用電気機械器具などは、訪問購入の対象から除かれています(同法施行令34条)。

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。届出・登録・許可の運用は、所管の行政機関や自治体によって異なることがあります。紹介している書き方は、民泊・宿泊施設の清掃に関する一般的な契約実務を整理した例であり、特定の事業者の契約書を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 民泊制度ポータルサイト(観光庁) / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)

アトラス行政書士法人|毎日5組限定契約書・利用規約の無料チェックお手元の書類の問題点を、行政書士が詳しく指摘します。1書類につき24時間以内に回答・お1人様3種類まで無料チェックの詳細を見る›

ご依頼の前に:対応の内容

料金は書類ごとの定額です(税込):契約書 1通15,000円/利用規約+プライバシーポリシー 2点で23,000円/特定商取引法に基づく表記 11,000円 料金表を見る

詳しい内容を見る

民泊清掃・ハウスクリーニングの契約書でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

公式LINEで無料相談する
アトラス行政書士法人 公式LINEの友だち追加QRコード
  1. 公式LINEを友だち追加
  2. 「民泊清掃・ハウスクリーニングの契約書ガイドを見た」とメッセージを送信
  3. ご相談内容を確認し、LINEでご返信します(365日・深夜や休祭日も通常対応)

相談無料です。料金が発生するのは、お申込みいただいた書類の作成と、お手元の書類の修正・加筆だけです。

LINEで友だち追加して無料相談する

申込フォーム・お電話でもご相談いただけます。

ご依頼・納品の流れを見る