ゴミ・廃棄物と残置物

民泊の清掃で、意外に大きな法律問題になるのがゴミです。「ついでに持って帰って」という頼みは、清掃会社にとって重いリスクになります。

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清掃会社が依頼主のゴミを持ち帰ることは、事業者が自らその廃棄物を運ぶ場合には当たりません。

このページの要点

  • 事業者は事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任で処理する(廃棄物処理法3条1項)。
  • 業務は分別して施設内・敷地内の所定の場所に保管するまでとし、搬出・処分は依頼主が行うと書く。
  • 廃棄物の収集・運搬を業として行うには許可が必要(同法7条1項・14条1項)。
  • ゲストの残置物は忘れ物として報告・保管し、所有権の放棄が確認できないものを捨てない。

ゴミは「分別して所定の場所に置く」まで

民泊の清掃で、意外に大きな法律問題になるのがゴミです。家主不在型の民泊の清掃を受ける契約のヒヤリングシートでは、ゴミについて「分別までが業務か、集積所への搬出や持ち帰りまで行うか」を尋ね、次のように注記しました。民泊から出るゴミは事業系の廃棄物として扱われるのが一般的で、清掃会社が施設の外へ持ち出して処分する運用は、廃棄物処理法上の許可の問題が生じ得る、というものです。

ヒヤリングで確かめたこと ゴミの処理の範囲

  1. ゴミは、施設内で分別・保管まで(処分は依頼主)ですか、指定の集積所への搬出までですか、清掃会社が持ち帰って処分しますか。持ち帰って処分する運用は、廃棄物の収集・運搬の許可の問題になり得ます。
  2. 自治体のルール(分別の区分・排出の方法)の確認は、誰の責任にしますか。物件の所在地ごとにルールが違うので、確認の責任を決めておきます。

依頼者の回答を踏まえて、この契約では次の条を置きました。

清掃業務委託契約 第◯条(廃棄物)

1乙は、ゴミを所在地の自治体の区分に従って分別し、施設内又は敷地内の所定の場所に保管するまでを行う。

2集積所への搬出、収集の依頼及び処分は、甲が自らの責任と費用で行う。乙は、ゴミを施設の外へ持ち出さず、処分しない。

3廃棄物の区分、排出の方法その他自治体の取扱いの確認は、甲の責任とする。

4通常の範囲を著しく超える量のゴミ、粗大ゴミ、危険物その他法令上特別の取扱いを要する廃棄物があるときは、乙はその処理の義務を負わず、甲に報告して協議する。

「廃棄物の収集運搬及び処分」は、業務に含まないものとしても明記しました(管理業との境界)。清掃会社が発注者として個人事業主に委託する契約でも、同じく「分別して所定の場所に保管するまで、搬出・収集の依頼・処分は発注者」としています。

なぜ持ち帰ってはいけないのか

事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任で適正に処理しなければなりません(廃棄物処理法3条1項)。民泊で生じたゴミの処理の責任は、宿泊の事業を営む依頼主の側にあると整理できます。一般廃棄物の収集・運搬を業として行うには市町村長の許可が(同法7条1項)、産業廃棄物の収集・運搬を業として行うには都道府県知事の許可が必要で(同法14条1項)、事業者が自らその廃棄物を運ぶ場合などは除かれます。清掃会社が依頼主のゴミを持ち帰ることは、この「自ら運ぶ」には当たりません。許可を受けずに収集・運搬を業として行うと、5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金又はその併科の対象になります(同法25条1項1号)。「ついでに持って帰って」という頼みは、清掃会社にとって重いリスクです。

ゴミの処理の3つの選択肢

施設内で分別・保管まで集積所への搬出まで/持ち帰り
清掃会社の作業分別して、施設内・敷地内の所定の場所に置く集積所まで運ぶ、又は持ち帰って処分する
処理の責任依頼主(事業者として自ら処理)持ち出すと清掃会社が運搬したことになり得る
許可通常は問題にならない収集・運搬の許可の要否を確認する必要がある
事務所の書類の扱い原則としてこの形採らない(業務に含まないと明記)

なお、住宅宿泊事業者がゲストに説明する事項には「ごみの処理に関し配慮すべき事項」が含まれています(住宅宿泊事業法施行規則8条2項2号)。ゲストへの分別の説明は依頼主の役割で、清掃会社はゲストが分別しなかったゴミを分別し直す作業をどう扱うか(基本料金に含むか、追加料金か)を契約で決めておきます。

「ゴミ回収」をメニューにしている場合

新しく清掃の会社を立ち上げる依頼者のサービス紹介資料には、ゴミの回収(袋単位の料金)、ゲストの滞在中のゴミの回収のみ(出張費+ゴミ代)といったメニューがあり、清掃の範囲の表では「ゴミの分別×」「建物内の所定のゴミ捨て場へのゴミ捨て○」となっていました。スタッフ向けの単価表にも「ゴミ回収のみの対応」の報酬がありました。建物内の所定の場所までの搬出にとどまるのか、施設の外へ運び出すのかで廃棄物処理法上の評価が変わるため、メニューの中身を確かめる必要があります。メニューの名前に「回収」とあると、持ち帰りまで引き受けると受け取られかねないので、言葉の選び方にも注意します。

ゲストの残置物は、勝手に捨てない

集合住宅の建物管理(清掃・点検・原状回復)を扱った協力会社の契約のレビューでは、残置物について次の点を整理しました。民泊の清掃でも、連泊の後や退去の後に大量の残置物が出る場面で参考になります。

  1. 残置物の所有権:退去した後の残置物でも、所有権を放棄する明確な意思表示がない限り、所有権は元の利用者に残ります。同意なく搬出・処分すると、自力救済として原則として違法になり得ます。指示に従って処分した協力会社も、共同不法行為者になり得ます。
  2. 処分を指示するときは、所有権放棄の書面、強制執行、有効な処分の特約のいずれかを確認し、その根拠を個別の契約に書く手順を置きます。
  3. 所有権が放棄された家財は、原則として一般廃棄物として扱われ(自治体によって異なることがあります)、運ぶには市町村長の一般廃棄物収集運搬業の許可が必要で、産業廃棄物の許可では運べません。
  4. 建設工事に伴う廃棄物は、元請業者が排出事業者となり(廃棄物処理法21条の3第1項)、下請が自ら運べるのは一定の要件を満たす場合に限られます。清掃や点検などの役務で生じる廃棄物にはこの規定は適用されず、排出事業者が誰かは事業活動の実態で決まります。

ご相談と回答 残置物の処分

退去後の残置物を、協力会社に処分させたいのですが。
所有権放棄の書面などの根拠を確認したうえで指示し、その根拠を個別の契約に書く手順を置くことをお勧めしました。残置物は原則として一般廃棄物として、許可を持つ業者が運ぶ必要があることもご説明しました。

民泊の清掃会社としては、ゲストの残置物は「忘れ物」として報告・保管の手順に乗せ、依頼主の指示があっても、所有権の放棄の確認がないものを独断で捨てない、と契約と社内のルールに書いておくのが安全です(忘れ物の扱い)。民泊のゴミが事業系の一般廃棄物と産業廃棄物のどちらに当たるか(ペットボトルなどの扱いを含む)は、自治体の運用で異なることがあるので、物件ごとに依頼主に確認してもらいます。

大量のゴミの処理を追加料金の対象とするか、処理の義務自体を負わないとするかは、料金・追加料金のページで紹介した料金表の作り方と合わせて決めます。

引き受ける範囲は契約ごとに違う――大量のゴミの扱いも

事務所の資料を並べると、同じ「ゴミ処理」でも引き受ける範囲がまったく違います。

事務所の資料に見るゴミの扱い
契約・資料引き受ける範囲
清掃会社が発注者として個人事業主に委託する契約ゴミの「収集」を業務とし(依頼者の回答)、分別と所定の場所への保管まで。搬出・処分は発注者
新設の清掃会社のサービス紹介資料分別はせず、建物内の所定のゴミ捨て場へのゴミ捨ては行う。ゴミは2種類(ビン・カン・ペットボトルとその他)に分けるため、最低2袋分の料金が生じる想定
運営代行の契約(施設側からの依頼)運営代行の業務内容に「ゴミ処理、分別・保管」を含む

個人事業主に委託する契約では、業務の名前は「収集」でも、中身は分別と所定の場所への保管までで、施設の外への搬出・処分は含めていません。清掃会社が自社のメニューを説明するときは、「分別するか」「どこまで運ぶか」「誰が処分を手配するか」の3点を分けて書く必要があります。分別のルールが違う自治体の物件を掛け持ちすると、分別の誤りで収集されず苦情になる、ということも起きます。分別の作業は清掃会社が行っても、分別の基準を調べて決めるのは排出する側、という役割分担を契約に書いておく意味はここにあります。家主不在型の民泊の清掃を受ける契約では、ゴミの分別方法を含む宿泊者向けの案内書の作成・掲示も依頼主の責任としました(管理業との境界)。

宿泊施設の運営会社が示した原案を受託者側でレビューした案件の修正版では、契約に定めのない作業や著しい汚損による特別清掃と並べて、通常の清掃の範囲を超える大量のゴミの処理を「別途見積り・承認」の対象にしていました。見積りと承認があれば清掃会社が処理する、という書き方です。これに対し、家主不在型の民泊の契約では、処理の義務そのものを負わない形を採っています。この契約のヒヤリングシートには、量の多い少ないにかかわらず、施設の外への搬出・処分は廃棄物処理法上の許可の問題になり得る、と注記していました。同じ「大量のゴミ」でも、料金の問題として書くか、引き受けない作業として書くかで、清掃会社が負う作業の中身が変わります。

残置物の処分の指示を受けるときの手順

建物管理の協力会社の契約の改訂では、入居者又は第三者の所有物の可能性がある残置物を、受注者は依頼主の明示の指示なく廃棄・移動・処分しない、としたうえで、指示を出すまでの手順を置きました。

残置物の処分の手順

  1. 元請先からの依頼依頼主は、元請先から書面又は電磁的方法による処分の依頼を受ける。
  2. 処分できることの確認所有権の放棄その他適法に処分し得ることを確認した場合に限り、受注者に指示する。
  3. 記録の保存依頼の記録を保存する。
  4. 搬出受注者が搬出するときは、一般廃棄物収集運搬業の許可が要る場合があることに留意し、指示に従って適法に対応する。

レビューでは、この手順は受注者のためというより、依頼主が元請先に対して「根拠のない指示を出していない」ことを証拠に残すためのものだとご説明しました。民泊でも、長期滞在のゲストが退去した後の大量の残置物や、置いていかれた家電・スーツケースを、依頼主のLINEの一言の指示で処分して後から所有者と争いになる、という場面で使えます(写真報告と忘れ物)。

内装の補修に広げるなら、廃棄物も書き分ける

同じ改訂では、①建設工事に伴う廃棄物で依頼主が元請業者になるときは、依頼主が許可業者と書面で委託契約を結んでマニフェストを交付する、②受注者が自ら運ぶのは法定の要件を満たす場合に限り、書面の個別契約に自ら運ぶ旨と種類・数量を書く、③清掃など建設工事でない業務に伴う廃棄物の処理責任の所在は発生の実態に応じて協議で定める、いずれの場合も不法投棄・無許可の運搬をしない、と書き分けました。民泊の清掃会社が内装の補修まで手を広げると、補修で出た廃材を清掃のゴミと一緒に持ち帰ってしまう、ということが起きかねません。工事も事業目的に含む清掃会社なら、清掃の契約とは別に、この書き分けが要る場面を想定しておきます(管理業との境界)。

このレビューの確認事項には、次の3点を入れ、現在の運用を聞いてから条を確定する項目としました。建設工事に伴う廃棄物は、発注者が排出事業者として処理業者と委託契約を結び、マニフェストを運用しているか、受注者が運搬・処分しているならその根拠は何か。残置物を搬出する場合、運ぶのは誰で、一般廃棄物収集運搬業の許可はあるか。処分を指示する場合、所有権放棄書や元請先の書面の指示など、根拠をどう取るか。ゴミの「今の出し方」を聞くことが、ヒヤリングの出発点になります。

よくあるご質問

民泊清掃で出たゴミを、清掃会社が持ち帰って処分してもよいですか?

持ち帰ると、依頼主の事業のゴミを清掃会社が運ぶことになり、廃棄物の収集・運搬の許可の問題が生じ得ます。分別して施設内・敷地内の所定の場所に置くまでを業務とし、搬出・処分は依頼主の役割とするのが安全です。

ゴミの分別と搬出は、契約書でどこまで引き受けるべきですか?

分別と所定の場所での保管までとし、集積所への搬出・収集の依頼・処分は依頼主の責任、自治体のルールの確認も依頼主の責任、と書くのが一般的です。ゲストが分別しなかったゴミの分別し直しの扱いも決めておきます。

大量のゴミや粗大ゴミが残されていたら、どうすればよいですか?

契約で、通常の範囲を著しく超えるゴミ・粗大ゴミ・危険物は処理の義務を負わず、報告して協議すると決めておきます。追加料金の対象にする場合も、施設の外への持ち出しはしない前提にします。

ゲストの残置物は、依頼主の指示があれば捨ててよいですか?

所有権の放棄が確認できないものを捨てると、指示に従った側も責任を問われ得ます。忘れ物として報告・保管し、処分するなら放棄の書面などの根拠を確認する手順を置きます。

「ゴミ回収」を有料メニューにするとき、注意することはありますか?

建物内の所定の場所までの搬出なのか、施設の外へ運び出すのかで、廃棄物処理法上の評価が変わります。メニューの中身と名前を、持ち帰りまで引き受けると受け取られない形にしておきます。

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