鍵・キーボックス・暗証番号

民泊では、鍵のトラブルが最も多い事故の一つです。キーボックスの番号を誰が管理し、変更を誰に知らせるかを契約で決めます。

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ゲストのチェックアウト後に依頼主が番号を変えたのに知らされず、現地で入れない。その無駄足の料金は、契約に書いておかないと請求しにくくなります。

このページの要点

  • 暗証番号の設定と変更は依頼主が自らの責任で行い、変更する前に清掃会社に通知する。
  • 通知漏れで入室できなかったときは、到着後の実施不能として扱うと定める。
  • 番号は業務の目的以外に使わず、再委託先と従事者以外に開示しない。契約終了後も秘密保持が続く。
  • ゲストへの鍵の受け渡しは業務に含めない。管理業との線引きにもつながる。

民泊では鍵のトラブルが最も多い事故の一つ

宿泊施設の運営会社が示した原案を受託者側でレビューした案件では、民泊では鍵のトラブルが最も多い事故の一つであり、鍵を紛失したときの責任の条を入れるべきだと指摘しました。民泊の鍵の論点は、留守宅の鍵を預かる家事代行やペットシッターとは少し違います。キーボックスの暗証番号を誰が設定・変更するか、ゲストへの鍵の受け渡しを誰が担うか、ホテルではマスターキーの紛失がどこまでの損害につながるか、が中心になります。

ヒヤリングで確かめたこと 入退室の手段

  1. 入退室は、キーボックス・スマートロック・物理的な鍵のどれですか。キーボックスなら番号は依頼主が設定・変更するか、スマートロックなら清掃会社の専用のコードを発行するか、物理的な鍵を清掃会社が預かるなら何本か、を確かめます。
  2. 番号の変更と鍵の管理の責任者は誰ですか。変更の通知漏れで入れなかったときに、誰の負担になるかが決まります。
  3. 紛失したときの費用の負担について、ご希望はありますか。錠の交換の費用、営業への影響をどこまで負担するかを、損害賠償の条と合わせて決めます。

家主不在型の民泊の清掃を受ける契約のヒヤリングシートで確かめた事項です。

番号の設定・変更は依頼主、変更は「変更前に」通知

清掃業務委託契約 第◯条(鍵及び入退室)

1乙の入退室は、甲が設置するキーボックスを使用して行う。キーボックスの暗証番号の設定及び変更は、甲が自らの責任において行う。

2甲は、暗証番号を変更するときは、変更の前に、連絡ツールにより乙に通知する。

3暗証番号の変更の通知漏れその他甲の鍵の管理に起因して乙が入室できず、個別業務を実施できなかったときは、到着後の実施不能の場合の定めを準用する。

4乙は、暗証番号を業務の目的以外に使用せず、再委託先及び従事者以外の者に開示しない。

5鍵、暗証番号その他の入退室の手段の管理に起因する紛失、不正な入室その他の事故については、乙の故意又は重大な過失による場合を除き、甲が責任を負う。

家主不在型の民泊の清掃を受ける契約で置いた条です。番号の変更の通知漏れは、到着後の実施不能(料金は全額)として扱うと決めておくと、現地で入れずに無駄足になったときの報酬を確保できます。

清掃会社が発注者として個人事業主に委託する契約でも、暗証番号を目的外に使わず開示しないこと、番号の情報の秘密保持は契約終了後も続くこと、入退室の手段の管理に起因する事故は受注者の故意・重大な過失による場合を除き発注者の側が責任を負うこと、を同じ構成で書きました。スタッフが退職した後も番号を知っている状態は避けられないので、依頼主には定期的な番号の変更をお願いし、スタッフとの契約では終了後の秘密保持と、私物の端末に番号を残さないことを求めておきます(清掃スタッフとの業務委託)。

ゲストへの鍵の受け渡しは、業務に含めない

事務所の改訂例 鍵の受け渡し

鍵の条の範囲

改訂前当初は鍵の受け渡し・管理も業務に含め得る前提で質問。(前提事実の確認前)
改訂後依頼者の回答で鍵の受け渡し・保管を業務の外としたため、鍵の条は「発注者が鍵・暗証番号を示し又は貸与する。宿泊者への受け渡しは業務の外」と整理しました(前提事実の変更)。

ゲストへの鍵の受け渡しと返却の確認は、運営代行の業務内容に入っている作業です。清掃の契約から外しておくことは、住宅宿泊管理業との線引きにもつながります(管理業との境界)。

新しく清掃の会社を立ち上げる案件のスタッフとの契約では、締結の時点で清掃用具・ユニフォーム・鍵などを貸与しないことを確認し、貸与する場合の条件と返還の方法(期限を含む)はその都度合意で定める形にしました(依頼者の回答による)。

ホテルのマスターキー

事務所の改訂例 ホテル清掃の貸与品

貸与品の管理

改訂前マスターキー・カードキー・備品・清掃用具などの貸与品を善良な管理者の注意で管理し、紛失・破損・第三者への貸与を禁止する。紛失・破損のときの責任の区分と上限はなし。(相手方提示の原案)
改訂後貸与のときに品目・数量・返還の条件を書いた書面を交付すること、清掃会社・従事者の故意又は過失による滅失・損傷に限り賠償し、通常の使用による経年劣化・自然の損耗、不可抗力、施設の設備の老朽化・不具合に起因する場合は除くこと、鍵を滅失した場合の賠償の範囲と限度は損害賠償・責任の制限の条(上限あり)によること、契約終了時の返還は立会いで品目・数量を確認して返還確認の書面を作ること、を定めました。

経年劣化や不可抗力による破損、設備の老朽化で使えなくなった場合まで責任とされるおそれがあり、マスターキーの紛失では、鍵の交換の費用だけでなく営業の補償や警備の費用まで請求される余地がありました。

マスターキーを紛失したときの錠の交換の費用は通常の損害として扱われやすい一方、営業の補償は特別の損害として争われやすい項目です(民法416条)。上限の条と、間接損害を除く条を置いておくことが、実際の交渉の土台になります(損害賠償と保険)。

鍵の論点の比較

民泊(キーボックス・スマートロック)ホテル(マスターキー・カードキー)
管理の主体番号の設定・変更は依頼主貸与品として清掃会社が管理
よくあるトラブル番号の変更の通知漏れで入れない、退職者が番号を知っている紛失による全室の錠の交換、警備の費用
契約で決めること変更前の通知、入れなかったときの料金、目的外使用の禁止、事故の負担貸与の書面、責任の範囲(故意・過失に限る)、上限、返還の立会い

暗証番号と物件の所在地は、宿泊者の安全に直結する情報

暗証番号と物件の所在地の組合せは、宿泊者の安全に直結する情報です。個人情報保護法は個人データの安全管理のための措置を求めていますが(個人情報保護法23条)、番号の情報はそれ以上に、社内で扱う人と場所を限るルールを置いておく必要があります。事務所の書類では、番号を業務の目的以外に使わないこと、再委託先と従事者以外に開示しないこと、契約終了後も秘密保持が続くことを、依頼主との契約とスタッフとの契約の両方に書いています。

入退室の方式ごとに、責任の置き方が変わる

家主不在型の民泊の清掃を受ける契約のヒヤリングシートでは、鍵について「鍵の管理方法は、紛失・不正入室が起きた場合の責任に直結します」と注記し、キーボックス・スマートロック・物理的な鍵の預かりの三択で尋ねました。三択にしたのは、方式によって責任の置き方が変わる前提で質問を組んだからです。回答がキーボックス(番号は依頼主が設定・変更)だったので、番号の設定・変更を依頼主の責任とする条になりました。物理的な鍵を預かる方式や、スマートロックで清掃会社専用のコードを発行する方式なら、預かった鍵やコードの管理の責任をどう置くかを別に決めることになります。

清掃会社が発注者として個人事業主に委託する契約では、鍵の受け渡し・管理の方法と紛失・盗難のときの責任の所在を尋ねたところ、回答は「よくあるパターンで」でした。このような回答のときは、民泊で一般的な分担(入室に必要な鍵・番号は発注者が示し又は貸与する、ゲストへの受け渡しは業務の外、事故は受注者の故意・重大な過失を除き発注者の責任)で起案し、その内容を説明書でお伝えしています。

鍵・番号・アカウントの管理と、なくしたときの初動

建物管理の協力会社の契約の改訂では、依頼主が貸与・提供する資料・図面・データ・鍵・ICカード・暗証番号・アカウントを「貸与物等」と定義し、次のルールをまとめて置きました。

  1. 善良な管理者の注意で管理し、業務以外に使わない。
  2. 事前の承諾なく、鍵の複製、暗証番号・アカウントの第三者への開示、転貸、目的外の利用をしない。
  3. 紛失・盗難・漏えいのおそれがあれば直ちに報告し、被害の拡大の防止と再発の防止に協力する。
  4. 契約の終了時や求めがあったときは、直ちに返却し、又は指示に従って削除・廃棄する。

キーボックスの番号が漏れた、スマートロックのアカウントを第三者に共有した、という民泊の場面にそのまま当てはまる書き方です。スマートロックのアカウントやメモに残した番号は、返却ではなく削除の対象になります。スタッフが合鍵を作っていた、番号を家族と共有していた、という事態も、複製と開示の禁止で正面から扱えます。

新しく清掃の会社を立ち上げる案件では、スタッフとの契約のヒヤリングで「清掃用具・ユニフォーム・鍵などの貸与の有無と返還の方法」と「契約終了後の貸与物の返還の方法・期限」を別々に質問しました。契約終了の条では、相手方から受けた資料・貸与品その他一切の物品を速やかに返還し、又は指示に従い廃棄する、としています。契約が終わっても番号が変更されず、元のスタッフが入れる状態が続く、ということが起きないよう、返還・削除の手順を契約に書いておきます。

建物管理の協力会社の契約の改訂では、重大な異常として「鍵の紛失」を、事故・負傷・漏水・火災・個人情報の漏えいと並べ、初動の手順を定めました。

協力会社の契約 第◯条(重大な異常)の骨子

1受注者は、鍵の紛失、事故、負傷、漏水、火災、個人情報の漏えいその他の重大な異常が生じたときは、被害の拡大の防止を優先し、直ちに依頼主に連絡する。

2受注者は、緊急の救護等の場合を除き、依頼主(又は保険会社)の承諾なく、責任の承認、示談又は賠償金の支払をしない。

3受注者は、事故の原因の調査、写真と記録の保存、関係者の情報の収集、保険会社への資料の提出に協力する。

鍵をなくしたスタッフがその場で依頼主に「全額弁償します」と言ってしまうと、保険が使えなくなるおそれがあります。

番号を知る人の範囲と、責任を負う人の範囲をそろえる

家主不在型の民泊の契約では、暗証番号を「再委託及び作業に従事する者の条項に定める場合を除き」第三者に開示しない、と再委託の条を参照する形にしました。この契約は再委託と従事者の利用を事前の承諾なしに認めているので、番号を再委託先・従事者に伝えることは許され、それ以外の第三者には伝えられない、という線が条文の参照でつながります。再委託先・従事者には同等の義務を負わせ、その行為は清掃会社自身の行為として責任を負います。番号を知る人の範囲を、契約上責任を負う人の範囲と一致させる設計です(再委託と多層構造)。

ホテル清掃の契約の改訂では、清掃会社は従事者に依頼主が認めた制服とバッジを着けさせ、施設の品位・信用を害さないよう服務の規律を保たせる、としました。再委託先の従事者が施設に立ち入るときは、あらかじめ依頼主に通知します。マスターキーを扱う人が誰かを施設の側が把握できるようにする条で、民泊でも、管理業者や運営代行から清掃の担当者の名簿を求められる場面の参考になります。

運営代行の業務の並びの中の「鍵」

運営代行の契約を施設の側からレビューした案件の業務内容の実施要領では、鍵が次の4か所に出てきます。

  • チェックインの対応:スマートロック・キーボックスによる非対面のチェックイン(必要に応じて対面)
  • 鍵の返却の確認:チェックアウト後の鍵の返却の確認(対面・キーボックス)
  • 設備の保守・安全管理:扉・窓・サッシ・鍵の点検、空室のときの施錠の確認
  • 契約の終了のとき:書類・鍵などの返却

事務所が作った清掃の契約では、鍵は清掃会社が入退室するための手段として書き(家主不在型の民泊の契約)、又は宿泊者への受け渡しと管理を業務に含めないと明記しています(清掃会社が個人事業主に委託する契約)。実施要領で鍵の点検と空室の施錠の確認が「設備の保守・安全管理」の区分に置かれていることからすると、これらを清掃の業務として定期的に引き受ける書き方は、運営代行の業務の並びに近づくと考えられます(管理業との境界)。

鍵の紛失に違約金を置くか

建物管理の協力会社の契約のレビューでは、損害賠償の条が「法令に従いその損害を賠償する」とだけ書かれていると、賠償の範囲は通常の損害と予見すべきであった特別の損害になり(民法416条)、損害の額は請求する側が立証しなければならない、と説明しました。そのうえで、虚偽の報告、鍵の紛失、無断の再委託、秘密情報の漏えいのように、損害の額の立証が難しく、発生を抑えたい違反には、賠償額の予定(違約金)を置く方法を示しました(民法420条1項・3項)。

レビューで示した整理の方向は、実際の損害が予定の額を上回るときは超えた分も請求できる形にすること、額は想定される実際の損害の合理的な見積りにとどめること、委託料から当然に差し引く建付けにはしないこと、の3点です。差し引く建付けをとらないのは、受注者が特定受託事業者(従業員を使わない個人事業主や一人会社)の場合に、報酬の減額の規制に触れるおそれがあるためです(フリーランス法5条1項2号。特定業務委託事業者が1か月以上の業務委託をした場合。同法施行令1条)。事業者間の契約では違約金の額に一律の上限はなく、著しく過大な場合に公序良俗(民法90条)を理由に減額される可能性がある、とも説明しています。

最終の改訂版では、損害賠償の条に置いた違約金は虚偽の報告・無断の再委託・資格や許可のない実施・秘密保持義務の違反の4つの違反に置き、鍵を含む貸与物等は、紛失のときの直ちの報告と、終了のときの返却・削除・廃棄の条で手当てしました(このページの「鍵・番号・アカウントの管理と、なくしたときの初動」の節)。あわせて、契約が終わったときは貸与物等を依頼主が指定する期限までに返却する、という条も置いています。清掃会社がスタッフに鍵を預ける立場で契約を作るときも、鍵の紛失を違約金の対象に含めるか、報告と返却の条で足りるとするかを選ぶことになります。

同じレビューでは、管理を受託しているにとどまる会社が土地の工作物(建物など)の占有者と評価される場面は限られるものの、鍵を保管して日常的に立ち入るなど建物を事実上管理していると見られる場合には、その評価を受ける余地があり、その場合に瑕疵を認識しながら放置していれば、損害の発生を防止するのに必要な注意をしたとはいえないことになる、とも説明しました(民法717条1項)。物理的な鍵を預かって清掃に入る方式をとる場合には、清掃中に見つけた不具合を報告する条が、放置していないことの記録としても意味を持つと考えられます。

よくあるご質問

キーボックスの暗証番号は、誰が管理する契約にすべきですか?

番号の設定と変更は依頼主が自らの責任で行い、変更する前に清掃会社に通知する、とするのが一般的です。番号の管理に起因する事故は、清掃会社の故意・重大な過失による場合を除き依頼主の負担と書いておきます。

暗証番号の変更が知らされず入れなかったら、料金は請求できますか?

契約で、通知漏れによる実施不能を「到着後の実施不能」としてキャンセル料(全額など)の定めを準用すると決めておけば請求できます。

鍵を紛失したら、どこまで賠償しなければなりませんか?

契約で、故意・過失による場合に限り、損害賠償の上限の条の範囲で賠償すると定めておきます。錠の交換の費用は通常の損害として扱われやすく、営業の補償は特別の損害として争われやすい項目です。

ゲストへの鍵の受け渡しも頼まれたら、引き受けてよいですか?

ゲストへの受け渡しは運営代行の業務に入っている作業で、引き受けるとゲストとのトラブルの当事者になり、管理業との線引きもあいまいになります。業務の外とするのが安全です。

スタッフが暗証番号を知っていることについて、どんな対策が必要ですか?

スタッフとの契約で目的外の使用と開示を禁止し、契約終了後も秘密保持が続くことを書きます。私物の端末に番号を残さない運用と、依頼主による定期的な番号の変更をあわせて進めます。

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本ページは一般的な情報提供です。届出・登録・許可の運用は、所管の行政機関や自治体によって異なることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた民泊・宿泊施設の清掃業務委託契約書、清掃スタッフとの業務委託契約書、利用申込書、ハウスクリーニングの利用規約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。参考: e-Gov法令検索 / 民泊制度ポータルサイト(観光庁) / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)

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