民泊清掃のLINE・チャットでの依頼は契約になる?合意の証拠と電子契約への切替え

LINEで受けた依頼も契約は成り立ちますが、争いになるのは内容が残っていないときです。成立の時点、到達、証拠力、電子契約との役割分担を整理します。

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このページの要点

  • 契約は書面がなくても成立するが、日時・作業・料金が残っていないと内容を示せない。
  • キャンセルの連絡は到達の時点で料金の段階が決まるため、営業時間で区切る定めを置く。
  • トークは署名のある文書のような推定を受けにくく、積み上げで示す。
  • 基本契約は電子契約、日々の依頼は連絡手段、と合意の種類ごとに置き場所を分ける。

結論:LINEの依頼でも契約は成り立つ。争いになるのは「何を、いつ、いくらで」が残っていないとき

民泊の清掃の依頼を、LINEやチャットで受けて動いている会社は少なくありません。結論から言うと、契約は書面を作らなくても成り立ちます。民法は、契約は申込みに対して相手方が承諾したときに成立し(522条1項)、成立には法令に特別の定めがある場合を除き書面の作成その他の方式は要らない(同条2項)と定めています。つまり、「明後日の午後、この部屋をお願いします」というメッセージに「承知しました」と返せば、その時点で清掃の契約が成り立ち得ます。

問題は、成り立つかどうかではなく、後から内容を示せるかどうかです。民泊の清掃では、同じ物件について依頼・変更・キャンセル・追加の連絡が短い間に何度も往復し、鍵の番号、ゲストの在室、汚損の写真といった情報が同じ画面に混ざります。1か月後に「その追加料金は聞いていない」「その日の依頼は取り消したはずだ」と言われたとき、どの発言が最終の合意なのかを説明できなければ、契約が成り立っていても、内容を主張できません。

用語を先に説明します。「申込み」は契約の内容を示して締結を求める意思表示、「承諾」はそれに応じる意思表示です。「到達」は、通知が相手方に届いて効力を生じる時点を指す民法の言葉です。「電子署名」は、データに付ける措置で、誰が作ったかを示し、改変がないかを確認できるものを指す法律上の言葉です(電子署名法2条1項)。

依頼の受け方・回答の期限・キャンセル料の段階は民泊清掃の依頼・キャンセル料・入室できなかった場合で、清掃の業務範囲は民泊清掃の業務委託契約書の業務範囲で扱っています。ここでは、それらの合意を「どの方法で成立させ、どう残すか」に焦点を当てます。

LINEのやり取りは、いつ契約になるのか

LINEの依頼が契約になるのは、依頼のメッセージが「申込み」と言える程度に内容を示し、相手の返信が「承諾」と言える場合です。実務では、この二つのどちらかが曖昧なまま作業が始まり、あとで食い違います。場面ごとに整理します。

LINEのやり取りの場面と、契約として見たときの問題(一般的な例)
場面契約としての見方残りやすい問題
依頼に対して「了解です」と返信した内容が特定されていれば、承諾として契約が成立し得る(民法522条1項)。依頼文に日時・作業・料金がなければ、何を了解したのかが特定できない。
既読が付いただけで返信がない既読は承諾の意思表示ではない。ただし継続取引では、返事をしない扱いが別に問題になる。依頼主は受けてもらえたと考え、清掃会社は受けていないと考える。
電話で決めて、あとでLINEに要点を書いた電話の時点で成立し得る。LINEはその内容を記録する役割。電話の内容とLINEの要約が食い違うと、どちらが正しいかを決める材料がない。
複数人が入るグループLINEに投稿した誰に宛てた申込みか、誰が承諾したのかが読み取りにくい。別の担当者が見落とし、誰も対応していない。
数時間後、翌日になってから返信した申込みの側が承諾の期間を定めたか、そのやり取りが対話に近いかで扱いが変わる。依頼主はすでに別の会社に頼んでいた。

返事をしなかったときに「受けた」ことになるのかは、依頼の回答とみなし承諾の解説で扱っているので、ここでは繰り返しません。ここでは、返事が遅れたときと、連絡が届いた時点について、LINEの特徴に絞って見ます。

返事が遅れたとき:承諾の期間の考え方

承諾の期間を定めてした申込みは、撤回できません。その期間内に承諾の通知を受けなかったときは、申込みは効力を失います(民法523条)。承諾の期間を定めなかった申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは撤回できません(同法525条1項)。また、対話者に対する申込みは、対話が継続している間はいつでも撤回でき、その間に承諾の通知を受けなかったときは効力を失います(同条2項・3項)。

LINEのやり取りが、電話のようにリアルタイムで続いている間は対話者に近く、半日置いて返信が来るときは離れた相手方への申込みに近い、と整理する余地があります。どちらに当たるかは、やり取りの間隔や状況で評価が分かれ得ます。清掃の現場では、「この依頼は◯時までに返事をください。それまでに返事がなければ他の会社に頼みます」と依頼の側が期限を示し、受ける側がそれに従う運用にしておけば、承諾の期間を定めた申込みとして整理しやすくなります。

連絡が「届いた」時点:到達の考え方

意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生じます(民法97条1項)。また、相手方が正当な理由なく通知が到達することを妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したものとみなされます(同条2項)。キャンセルや日程変更のように、時刻で料金が変わる連絡では、この「到達」が料金の段階を決めます。

LINEでは、送信した時刻、相手の端末に届いた時刻、相手が画面を開いた時刻(既読)の三つが別々に存在します。一般には、到達は相手方が内容を知ろうと思えば知ることができる状態に置かれたことを指す、と説明されます。ただ、深夜の連絡は、送信の時点で相手の画面に出ていても、相手が見られる状態にあったと言えるのかが争われやすい場面です。契約では、到達の時点を営業時間で区切る定めを置いておくのが現実的です。

民泊清掃の現場で、LINEの記録が必要になる場面

清掃の契約でLINEの記録が最も役に立つ(逆に言えば、なければ困る)のは、次の場面です。「何が起きたか」ではなく、「契約上どの事実を示す必要があるか」から逆算して、残す記録を決めます。

場面ごとに、示す必要がある事実と残す記録(一般的な例)
場面示す必要がある事実残す記録
追加の清掃・作業の依頼追加の作業を頼まれたこと、料金に同意があったこと。追加の内容と金額を書いた依頼のメッセージと、金額に触れた承諾の返信。「追加でお願いします」だけでは金額の合意が読めない。
キャンセル・日程の変更連絡が届いた日時。どの段階のキャンセル料に当たるか。連絡のメッセージと送信日時。営業時間外の連絡は、翌営業日に届いたとみなす旨の契約上の定め。
入室できなかった日到着したこと、入れない原因が清掃会社の責任でないこと、依頼主に連絡したこと。到着の写真、依頼主への連絡と指示のやり取り、待機の時間。
鍵の番号・入室方法の変更変更の通知を誰がいつ出したか。変更を伝えたメッセージ。古い番号が残っているトークの中で最新の番号を見分けられる書き方。
汚損・破損の報告入室したときすでにあった状態か、作業中に生じたものか。入室直後の写真と報告のメッセージ。報告の時刻。
完了報告と検収作業が終わったこと、依頼主が受け取ったこと、直しの依頼があったか。完了の報告、前後の写真、依頼主の返信。再清掃の依頼があった時刻。

それぞれの場面の契約上の扱いは、鍵と入室の問題が民泊のキーボックス・鍵の管理と契約書、写真の扱いが民泊清掃の写真報告と忘れ物の扱い、追加料金の金額の合意が民泊清掃の料金と追加料金の決め方、直しの依頼の期限が清掃の検収と再清掃のルールにあります。このページで見るのは、それらの合意がLINEの上でどう成立し、どう残るかだけです。

追加料金のメッセージは、金額を同じ文面に書く

民泊清掃で最も記録の不足が目立つのは、追加料金です。現場で汚れがひどいと分かったとき、清掃会社が写真を送って「追加作業が必要です」と連絡し、依頼主が「お願いします」と返す、という流れは自然です。ところが、このやり取りに金額が出てこないことがあります。金額が料金表にあるなら、料金表のどの項目かを書くだけで足ります。料金表にない作業は、金額を文面に書き、承諾の返信をもらってから作業に入る、という順序を決めておくと、後の争いが減ります。

グループLINEに入れる人と、流す情報

オーナー、運営会社、現地の管理人、清掃会社の担当者、スタッフが一つのグループに入っていると、連絡は速くなります。一方で、ゲストの氏名、人数、国籍、宿泊の日程といった情報が、清掃に必要な範囲を超えて流れやすくなります。個人情報取扱事業者は、利用目的をできる限り特定しなければならず(個人情報保護法17条1項)、あらかじめ本人の同意を得ないで利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱ってはなりません(同法18条1項)。個人データを第三者に提供するときは、原則として本人の同意が要ります(同法27条1項)。

清掃会社が受け取る情報は、清掃に必要な「人数」「チェックアウトの時刻」「在室の見込み」程度に絞り、氏名や連絡先はグループに流さない、とルールを決めておくのが基本です。退会した人の端末にトークが残り続けることもあるので、スタッフの交代や契約の終了のときにグループから外す手順も決めます。個人データの扱いを委託するなら委託先の監督(同法25条)、利用する必要がなくなったデータは遅滞なく消去する努力(同法22条)も関わります。

清掃スタッフにLINEで指示を出すとき

清掃会社が個人のスタッフに仕事を出す場面では、LINEが業務の連絡の中心になります。ここには二つの論点があります。一つは、委託をするときの取引条件の明示です。業務委託事業者は、特定受託事業者に業務委託をした場合は、直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面又は電磁的方法により明示しなければなりません(フリーランス法3条1項)。特定受託事業者は、従業員を使用しない個人などを指します(同法2条1項)。電磁的方法で明示したとき、相手から書面の交付を求められたら、遅滞なく書面を交付する必要があります(同法3条2項)。電磁的方法の具体的な範囲は公正取引委員会規則で定められているので、LINEで明示するときは、その規則の定めに当たるかを確認します。

もう一つは、指示の出し方です。LINEで毎回、出勤の時刻、作業の順番、使う道具まで細かく指示し、断る余地がない運用になっていると、契約書が業務委託であっても、実態としては指揮命令を受けて働く関係と評価される方向に働きます。スタッフ側が受けるか断るかを選べること、仕事の進め方は本人が決めることを前提に、LINEの文面も「お願いできますか」「◯日の◯時から◯時までの枠があります」のように依頼の形にしておくのが安全です。詳しくは清掃スタッフとの業務委託契約書を参照してください。スタッフが別の人に作業を任せる場合の扱いは民泊清掃の再委託と多層構造で扱っています。

LINEのトークは証拠になるのか:電子署名との違い

結論として、LINEのトークは証拠として提出できますが、署名や押印のある契約書とは、証拠としての働き方が違います。民事訴訟法は、私文書は本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する、と定めています(228条4項)。真正に成立したとは、その人が作ったものである、という意味です。電子署名法3条は、これと同じ働きを電子データに与えるもので、本人による電子署名(本人だけが行うことができるものに限る)が行われている電磁的記録は、真正に成立したものと推定されます。

電子署名とは、データに行う措置で、①そのデータが措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであり、②改変が行われていないかを確認できるもの、という二つの要件を満たすものです(電子署名法2条1項)。通常のLINEのメッセージには、この二つを満たす仕組みが付いているわけではないので、署名のある文書と同じように「本人が作ったものと推定される」という扱いは、受けにくいと考えるのが無難です。

だからといって、トークが証拠にならないわけではありません。裁判所は、口頭弁論の全趣旨と証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証で事実を判断します(民事訴訟法247条)。電磁的記録に記録された情報の内容を証拠にするときは、その電磁的記録を提出するなどの方法で申し出ます(同法231条の2第1項)。トークの画面、前後の流れ、その後の作業や支払の事実を合わせて、合意があったかどうかが判断されます。つまり、署名があれば推定が働くのに対し、トークは積み上げで示すことになり、争われたときの負担が重くなります。

争われやすい点の比較(一般的な例)

LINE・チャット電子契約サービスで締結した契約書
誰の発言かアカウントの持ち主が本人とは限らない。端末を共有する、担当者の私用の端末を使うなど。本人確認の手順と署名の記録が残る。どの水準の確認かはサービスごとに異なる。
改変がないか画面の切り取りや一部だけのスクリーンショットは、前後が分からない。署名後に内容が変わっていないかを確認できる仕組みが付くのが通常。
合意の内容依頼・変更・取消しが何十往復にも分かれ、最終の内容が読み取りにくい。一つの文書に条件がまとまる。
いつ成立したか送信・到達・既読が別々で、成立の時点がぼやける。署名の完了の時刻が記録される。

残る事実が違うので、基本契約は後者、日々の依頼は前者、と役割を分けます。

トークを証拠として使えるように残す工夫

  • 確認の返信に条件を繰り返す:「承知しました」だけでなく、「6月10日の14時から、◯◯(物件の呼び名)、通常清掃、料金は料金表の通りで承ります」と、日時・作業・料金を書き写す。
  • 口頭の合意は当日中に文字にする:電話や現地で決めたことは、その日のうちに要点をメッセージにして送り、食い違いがあれば返信してもらう。

契約書によくある誤り:LINEについての条項の書き方と直し方

清掃会社と民泊の運営会社の間の契約書では、LINEなどの連絡手段について、実際の運用と合わない書き方がよく見られます。以下は、実務でよく見られる書き方と、その直し方の例です。

書き方の例(一般的な例) LINE・チャットの条項

依頼の方法と成立

よくある書き方「依頼はLINEで行い、LINE上に書かれた内容があれば正式な発注があったものとして扱う。別に発注書は作らない。」
整えた書き方「個別の依頼は、甲が指定する連絡手段により、対象物件、実施日、チェックアウト及びチェックインの時刻、作業の種類、料金を記載して行う。乙が同じ手段で受託する旨を回答した時に、個別の依頼が成立する。記載が不足しているときは、乙は補足を求めることができ、補足がされるまで成立しない。」

「LINEの注文を正式な発注とみなす」だけでは、何が書かれていれば発注なのかが決まりません。成立に必要な項目と、受ける側の回答で成立する流れを書くと、日時や料金の食い違いを減らせます。

到達の時点

よくある書き方「公式LINEで通知した時点で到達したものとみなし、乙は閲覧しなかったことを理由に異議を述べられない。」
整えた書き方「通知は、相手方が閲覧できる状態に置かれた時に到達する。営業時間外に送信された通知は、翌営業日の営業時間の開始時刻に到達したものとみなす。キャンセル、料金の変更その他重要な通知は、受信した側が受領の旨を返信するまで、送った側は再送又は電話で確認する。」

到達の時期を契約で決めること自体は可能ですが、送信の時点で足りるとして、閲覧しなかったことの異議を一方的に封じる書き方は、受ける側の負担が重くなります。営業時間で区切り、重要な連絡だけ確認の手順を加えるほうが、争いにくくなります。

異議がないときの同意

よくある書き方「通知した内容について、相手方が合理的期間内に異議を述べないときは、同意したものとみなす。」
整えた書き方「前項のみなし同意は、料金の増減を伴わない軽微な連絡に限る。実施日時の変更、追加の作業、追加の料金は、相手方が明示的に承諾した時に成立する。」

沈黙は承諾になりません(承諾は意思表示が必要)。みなし同意の範囲を広げすぎると、後から追加料金の効力が争われます。金額に関わる事項は明示の承諾に限ります。

変更の方式

よくある書き方「契約の変更は、書面によらなければ一切効力を生じない。LINE、電話その他による合意は無効とする。」
整えた書き方「契約書本体、料金表及び別紙の変更は、電子契約サービスの署名又は書面による。個別の依頼の実施日時、作業の内容、人数の変更は、第◯条の連絡手段により行うことができる。」

日々の変更まで書面を求める定めは、現場の運用と合いません。守られない条項が残ると、「実際には黙って変更していた」という事実が積み重なり、条項の意味が弱くなります。層を分けて、実際に守れる内容にします。

電子契約に切り替えるとき:何を電子にして、何をLINEに残すか

電子契約に切り替えるときの最初の判断は、「すべてを電子契約にするかどうか」ではなく、「どの合意を電子契約にするか」です。民泊清掃の依頼は、1日に何件も発生し、前日や当日に変わります。依頼の一件ごとに電子契約サービスで署名を取ると、現場が回りません。一方、期間、料金表、責任の範囲、解約、秘密保持といった、取引の枠組みは、一度だけ明確に締結しておくべきです。

合意の種類ごとの置き場所(一般的な例)

電子契約サービス連絡手段(LINE・予約管理ツール)
基本契約(期間・責任・解約・秘密保持)署名して締結する。置かない。
料金表・追加料金の一覧・キャンセル料の段階基本契約の別紙として電子契約に添付する。改定も署名で行う。改定の予告の連絡のみ。改定そのものは契約で決めた方式による。
個別の依頼(日時・物件・作業)置かない。決められた項目を書いて依頼し、受託の回答で成立させる。
日程の変更・キャンセル置かない。連絡の到達を基準に、料金表の段階に当てはめる。
契約の更新拒絶・解約契約で決めた方式(電子契約サービスの通知機能や書面)で行う。LINEのみで行える扱いにはしない。

解約や更新拒絶を電子契約サービスの通知機能で行えるかは、契約書の定めによります。

切替えの手順

LINE中心の運用から、電子契約を加えた運用に移す手順(一般的な例)

  1. いまの合意の置き場所を洗い出す基本契約が紙か、口頭か、LINEの文面だけか。料金表はどこにあるか。直近1年に変更があったか。
  2. 基本契約を一度、まとめ直して電子で締結する過去の個別の合意を取り込み、料金表と連絡手段の定義を別紙にする。LINEで交わしてきた条件が契約書に入っているかを確認する。
  3. 切替日と、従前の依頼の扱いを決める切替日より前に成立した個別の依頼は、従前の条件で続くのか、新しい条件になるのかを書く。
  4. 連絡手段を定義するツールの名前に固定せず、指定する手段、営業時間、到達の時点、窓口のアカウントを決める。
  5. 署名する人を確認する代表者が署名するのか、担当者が署名するのか。担当者なら、会社として権限を与えているかを確認する。
  6. 保存と引継ぎを決める締結済みのデータを各社が手元にも保存する。サービスを解約・乗り換えるときのデータの取り出し方を決める。
  7. 紙や別の方法も用意する電子の操作に不慣れな相手のために、紙でも締結できる選択肢を残す。

署名するのは誰か

代理人がその権限内で本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生じます(民法99条1項)。電子契約サービスで担当者が署名するときも、会社として権限を与えているか、との問題が出ます。第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内でその他人がした行為について責任を負う(同法109条1項)、という規定もありますが、これに頼るのではなく、署名者の権限を最初に確認しておくほうが堅実です。

電子署名法3条との関係

電子契約サービスを使えば、電子署名法3条の推定が当然に働くわけではありません。推定を受けるには、本人による電子署名で、本人だけが行うことができるものであることが条件です(同法3条)。サービスによって、本人確認の方法や、署名の仕組みが異なります。導入前に、本人確認の方法、署名の記録の内容、署名後の改変の確認方法、データの保存期間と取り出し方を、サービスの説明資料で確認します。

ヒヤリングで確認すること:運用を聞かなければ、条項は書けない

LINEや電子契約についての条項は、他の条項と違い、実際の運用を聞かなければ書けません。同じ「連絡はLINE」でも、会社のアカウントなのか担当者の個人のアカウントなのか、グループなのか個別なのかで、必要な条項が変わるからです。契約書を作る前に、次の点を確認します。

ヒヤリングで聞く問い(一般的な例) LINE・チャットの運用

  1. 依頼は、誰が、どの画面で、いつまでに出していますか。成立の時点と、依頼に書く項目、回答の期限を決める出発点になります。個人の端末なのか、会社のアカウントなのか、共有のカレンダーを使っているのかで条項が変わります。
  2. グループLINEに誰が入っていますか。ゲストの情報は流れていますか。個人データの第三者への提供や、必要な範囲を超えた取扱いが起きていないかを確認します。退会や交代のときの手順も決めます。
  3. キャンセルや変更の連絡は、夜間や早朝にも届きますか。到達の時点を営業時間で区切る必要があるかを判断します。深夜の連絡の扱いが、料金の段階に直結します。
  4. 追加の作業や料金は、どの方法で承認を取っていますか。金額まで書いた承諾が残っているか。料金表にない作業の扱いと承認の方法を決めます。
  5. いま、基本契約は書面で結んでありますか。いつの時点の内容ですか。電子契約に移すときに、取り込むべき条件を洗い出します。口頭やLINEだけの条件が残っていないかを確認します。

回答は、連絡手段の定義、到達の時点、変更の方式、記録の保存の条に反映します。

条文例と、キャンセルの到達時刻の計算例

ここまでの内容を、清掃業務委託契約の条文の形にします。条文の番号と当事者の呼び名(甲=依頼主、乙=清掃会社)は仮のものです。実際の運用に合わせて、記載する項目や時刻を調整します。

清掃業務委託契約 第◯条(連絡手段及び個別の依頼)

1甲及び乙は、個別の依頼、受託の回答、日程の変更、キャンセルその他の連絡(以下「業務連絡」という。)を、甲が指定する情報伝達手段(以下「連絡手段」という。)により行う。連絡手段の名称は別紙に記載し、変更するときは、甲は、変更の◯日前までに乙に通知する。

2個別の依頼は、対象物件、実施日、チェックアウトの時刻、次のチェックインの時刻、宿泊人数、作業の種類及び料金を記載して行う。記載が不足しているときは、乙は補足を求めることができ、補足がされるまで、個別の依頼は成立しない。

3乙は、前項の依頼に対し、連絡手段により、実施日及び作業の種類を繰り返して記載した回答を行う。個別の依頼は、乙の回答が甲に到達した時に成立する。

4甲及び乙は、連絡の窓口となる部署又は担当者のアカウントと予備の連絡先を届け出る。窓口の変更は、◯日前までに相手方に通知する。

依頼に書く項目と、成立の時点を決める条です。回答の期限は、依頼への回答の条(依頼・キャンセルのページ)と合わせて定めます。

清掃業務委託契約 第◯条(業務連絡の到達)

1業務連絡は、相手方が閲覧できる状態に置かれた時に到達する。ただし、営業時間(◯時から◯時まで)外に送信された業務連絡は、次の営業日の営業時間の開始時刻に到達したものとみなす。

2キャンセル、日程の変更、料金の変更その他重要な業務連絡については、受信した当事者は、受領した旨を速やかに返信する。返信がないときは、送信した当事者は、連絡手段以外の方法で確認することができる。

3前二項の定めは、実施日の当日の業務連絡で、乙が既に現地に向けて出発しているときその他、時間的な余裕がない場合を妨げない。この場合、当事者は、電話その他の方法により直ちに連絡する。

到達を営業時間で区切る条です。当日の連絡は、営業時間の開始前に清掃が始まることがあるため、第3項を置いています。

清掃業務委託契約 第◯条(変更の方式及び記録)

1本契約、料金表及び別紙の変更は、電子契約サービスによる署名又は書面による。

2個別の依頼の実施日時、作業の内容、人数その他の変更は、第◯条の連絡手段により行うことができる。ただし、料金が増加する変更は、増加する額を記載した依頼に対し、相手方が明示的に承諾した時に成立する。

3甲及び乙は、業務連絡の記録を、実施日から◯年間、保存する。連絡手段の変更又は解約により記録を取り出せなくなるおそれがあるときは、変更又は解約の前に、当事者は記録を保存する。

4個別の依頼に係る宿泊者の個人情報は、清掃の実施に必要な範囲で用い、業務連絡の参加者を必要な範囲に限る。

変更の方式を二層に分ける条です。第2項の但書で、金額が増える変更を明示の承諾に限っています。

計算例:キャンセルの連絡の到達時刻で、料金が変わる

次の条件で考えます(数字は例です)。料金は1回10,000円、キャンセル料は「実施日の2日前の営業時間内に到達したキャンセルは無料、実施日の前日に到達したときは料金の50%、当日に到達したときは100%」、営業時間は9時から18時、営業時間外の連絡は次の営業日の9時に到達したものとみなす、とします。

キャンセルの連絡を送った時刻と、キャンセル料(計算例)
送信した時刻到達したとみなす時刻段階キャンセル料
実施日の2日前の17時40分2日前の17時40分(営業時間内)2日前の営業時間内0円
実施日の2日前の23時50分前日の9時(営業時間外のため翌営業日の開始)前日10,000円 × 50% = 5,000円
実施日の前日の17時55分前日の17時55分(営業時間内)前日5,000円
実施日の前日の21時30分当日の9時(営業時間外のため翌営業日の開始)当日10,000円 × 100% = 10,000円

2行目と4行目のとおり、深夜の連絡は、送信が「2日前」や「前日」の日付であっても、営業時間で区切ると一段階重い段階になります。逆に言えば、営業時間による区切りを契約に書かなければ、「送った日付」と「届いた時点」のどちらで数えるのかが決まらず、清掃会社も依頼主も主張を説明できません。当日の朝に清掃が営業時間の開始より早く始まるときは、前掲の到達の条の第3項のように、電話による確認を併せて定めます。

損害が生じたときの賠償の上限や保険の扱いは清掃会社の損害賠償の上限と賠償責任保険で扱っています。連絡の記録は、損害の原因が誰の側にあるかを示す材料になるため、この賠償の議論と併せて保存の期間を決めます。

よくあるご質問

民泊清掃の依頼をLINEで受けただけで、契約は成立しますか?

成立し得ます。契約は申込みに対する承諾で成立し、書面などの方式は要りません(民法522条)。ただし、日時・作業・料金が依頼に書かれていないと、内容を示すことができません。依頼に書く項目と、受ける側が条件を繰り返して返信する運用を決めておくと、成立と内容の両方を示せます。

深夜に届いたキャンセルの連絡は、前日扱いと当日扱いのどちらですか?

意思表示は通知が到達した時から効力を生じます(民法97条1項)。深夜の連絡がいつ到達したかは、契約に書いていなければ争いになります。営業時間外の連絡は翌営業日の開始時刻に到達したものとみなす、と定めておけば、料金の段階を機械的に当てはめられます。

LINEのスクリーンショットは、裁判で証拠になりますか?

証拠として提出すること自体はでき、裁判所は全趣旨と証拠調べの結果から自由な心証で判断します(民事訴訟法247条)。ただし、署名や押印のある文書のような推定(同法228条4項)は働きにくいため、前後の流れや、その後の作業・支払の事実と合わせて示すことになります。

電子契約にすれば、LINEでの依頼はやめるべきですか?

やめる必要はありません。基本契約・料金表・解約のような取引の枠組みを電子契約で締結し、日々の依頼や日程の変更は、契約で決めた連絡手段で行う、という役割分担が現実的です。契約書には、どの合意をどの方法で行うかを書いておきます。

清掃スタッフとの連絡をLINEで行うとき、気をつけることは何ですか?

業務委託をするときの給付の内容や報酬の額などは、書面又は電磁的方法で直ちに明示する必要があります(フリーランス法3条)。また、LINEで細かい指示を出し、断れない運用になっていると、実態として指揮命令があると評価される方向に働きます。依頼の形にして、受けるか断るかを選べる運用にします。

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本ページは一般的な情報提供です。届出・登録・許可の運用は、所管の行政機関や自治体によって異なることがあります。紹介している書き方は、民泊・宿泊施設の清掃に関する一般的な契約実務を整理した例であり、特定の事業者の契約書を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 民泊制度ポータルサイト(観光庁) / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)

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