ハウスクリーニングの利用規約と契約書

エアコン・キッチン・浴室などのハウスクリーニングは一般の家庭が相手になることが多く、民泊清掃と違って消費者契約法と特定商取引法がかかってきます。

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見積りに呼ばれた訪問で、依頼されていない追加の作業を勧めて契約すると、訪問販売の規律がかかる方向に働きます。

このページの要点

  • お客様の自宅で契約を結ぶと訪問販売になり得る。自宅での契約を請求したお客様への訪問販売は書面とクーリング・オフの適用除外(特定商取引法26条6項1号)。
  • 訪問販売のクーリング・オフでは、作業を終えていても対価を請求できない(同法9条5項)。
  • 責任の全部の免除は無効。軽い過失の場合の上限は、軽い過失に限ることを明示する(消費者契約法8条)。
  • キャンセル料は、解除に伴う平均的な損害を超える部分が無効(同法9条1項1号)。

一般の家庭が相手なら、消費者契約法と特定商取引法

民泊清掃は事業者どうしの取引が中心ですが、エアコン・キッチン・浴室・床などのハウスクリーニングは、一般の家庭が相手になることが多く、消費者契約法と特定商取引法がかかってきます。事務所では、個人事業のハウスクリーニング業者のために、次の書類を組み合わせて作成しました。

ハウスクリーニング業者の書類の組合せ
書類主な内容
利用規約定義、適用範囲、単発契約と定期契約、サービスの内容と実施、利用者の協力の義務、料金と支払、解除、不可抗力、損害賠償と責任の制限、作業の不備への対応、クーリング・オフ、禁止事項、個人情報、秘密保持、反社会的勢力の排除、通知の方法、準拠法・合意管轄、事業者の情報
業務契約書通常版と簡易版
裏面の約款契約の種類、業務の実施、支払、損害賠償と免責、キャンセルの方針、クレームの対応、禁止事項、秘密保持、反社会的勢力の排除、準拠法・管轄+「クーリング・オフのお知らせ」

規約と個別の契約の関係

規約では、見積書・申込書・注文書・作業指示書などを「個別契約」と定義し、規約と矛盾するときは個別契約を優先するとしました。規約は、利用者の属性(法人・個人、消費者・事業者)を問わず適用し、法令による制限がある場合はそれに従う、とも書いています。単発の契約は作業の完了で終了し、定期の契約は1年・自動更新(満了前の一定期間までに終了の意思表示)としました。定期の契約の自動更新は、利用者が知らないまま続いている状態になりやすいので、申込みのときの説明と、更新の前の通知の運用をあわせて決めておきます。

利用者の協力の義務と、危険な作業の事前確認

  • 電気・水道・ガスの使用の許可、家具・家電の事前の移動、鍵の提供・開錠、必要なときの立会い
  • ペット・幼児・高齢者が作業の場所に立ち入らないための配慮、貴重品の事前の退避
  • 協力が得られず作業できないときは中止でき、費用を請求できる。現地に出向いたのに開錠されない・電気や水道が使えない場合も同じ扱い
  • 高所の作業・特殊な機器の取扱い・設備への接続を要する作業は、事業者が可否と条件を判断し、必要に応じて別に同意を得る。電気工事・配管工事・高圧洗浄機などの作業は事前の同意なしに行わない

エアコンの分解洗浄のような作業の事故に備えるには、日常の清掃とは別の作業として、実施の可否・方法・リスクの説明と同意を個別に取る形が向いています(専門の作業の事故)。作業の対象物の性状・経年劣化・素材の特性によって清掃の効果に限界があることを利用者が承諾する、という条も置きました。

訪問販売になる場面と、ならない場面

営業所以外の場所(お客様の自宅)で役務の提供の契約の申込みを受け、又は契約を結ぶと、訪問販売になります(特定商取引法2条1項1号)。訪問販売に当たれば、申込みのときと契約のときに法定の事項を書いた書面を交付し(同法4条・5条。電磁的な方法は相手の承諾が必要)、8日間のクーリング・オフ(同法9条)の規律がかかります。ただし、その住居で契約の申込みや締結をすることを請求したお客様に対して行う訪問販売には、書面の交付やクーリング・オフなど(同法4条〜10条)は適用されません(同法26条6項1号)。

ハウスクリーニングで訪問販売の規律がかかるか

かからない方向かかる方向
訪問のきっかけお客様から、作業の依頼と契約のための訪問を求められた事業者の側から訪問を持ちかけた
訪問先での契約依頼された作業の契約見積りに呼ばれた訪問で、依頼されていない別の作業(追加のエアコン洗浄、防カビの施工など)を勧めて契約した
お客様の属性店舗や民泊など、営業のための契約(同法26条1項1号)一般の家庭

見積りで訪問したときに別の作業を勧めて契約した場合に「請求」があったといえるかは、慎重に考える必要があります。追加の作業の契約は後日の申込みに回すか、訪問販売の書面を前提にするのが安全です。

クーリング・オフで、作業済みの代金はもらえない

訪問販売に当たる場合、法定の書面を受け取った日を含めて8日以内なら、お客様は書面又は電磁的記録で無条件に契約を解除でき、発信したときに効力が生じます。事業者は損害賠償や違約金を請求できず、受け取った代金は全額返します。清掃のような役務では、すでに作業を終えていても対価を請求できないことが、実務上の要注意点です(同法9条5項)。土地や建物の状態を変えていた場合は、お客様は無償で元に戻すよう求められ、お客様に不利な特約は無効です。

事務所が作成した裏面の約款では、「クーリング・オフのお知らせ」として、返金、費用の負担、使用・消費の後も対価を請求しないこと、不実のことを告げられたり威迫されたりしてクーリング・オフをしなかった場合の期間の延長、通知先の事業者の情報を書きました。キャンセルの方針は、作業日の前日・当日、作業の開始後に分け、サービス料金に対する一定の割合のキャンセル料としています。

消費者契約法で無効になる条項を避ける

規約で気をつける消費者契約法の規律
条項気をつけること
責任の免除・上限事業者の損害賠償責任の全部の免除、故意・重大な過失の場合の一部の免除は無効(消費者契約法8条1項)。軽い過失の場合の一部の免除は、軽い過失に限ることを明示しないと無効(同条3項)
キャンセル料解除に伴う平均的な損害を超える部分は無効(同法9条1項1号)
遅延損害金年14.6%を超える部分は無効(同項2号)
不備の通知期限・請求の期限消費者の利益を一方的に害する条項は無効(同法10条)。期間の長さと起算点を検討する

作業の不備は、完了日を含めて数営業日以内に具体的な内容を通知してもらい、事業者が自らの責めによる不備と合理的に判断したときは再作業・修補・減額などで対応する、という構成にしました(検収と再清掃)。ウェブで申し込ませる規約は定型約款に当たり得るので、表示と合意の方法(民法548条の2第1項)、不当な条項は合意しなかったものとみなされること(同条2項)、変更の要件(同法548条の4)も意識して作ります。

民泊清掃の会社がハウスクリーニングも営むとき

民泊清掃とハウスクリーニングの両方を営む清掃会社では、オーナーとの事業者間の契約と、一般の家庭との消費者向けの規約を、同じ書類で済ませないことが大切です。家主不在型の民泊の清掃を受ける契約では、ハウスクリーニングのメニューを参考の別紙とし、業務には含めず、実施の都度見積りを示して承認を得る扱いにしました(依頼者の選択による)。個人の小規模な民泊オーナーとの契約が「営業のための契約」に当たるかは、事業の実態によって分かれ得るので、届出・許可の確認とあわせて、消費者契約法で無効になる条項を避ける設計にしておくと安全です(依頼主の確認)。

書類の使い分けと、料金が確定する時点

個人事業のハウスクリーニング業者の書類では、作業ごとの申込書・契約書は、契約の種類や金額などの詳細を表面に書き、裏面の約款に共通の条項を置く形にしました。定期の契約(1年・自動更新)と単発の契約(期間なし)の別は、表面で選びます。裏面の約款の末尾に「クーリング・オフのお知らせ」を置いたのは、訪問販売に当たる場合の告知を、契約書と一体で渡せるようにするためです。継続的な取引向けの業務契約書は、事業者(法人)の顧客と継続して取引する場合にも使えるよう、相手方の欄に法人名と氏名の両方を置いています。

規約では、定期の契約で更新後に重大な変更が必要になったときは協議して書面で合意する、有効期間中でも不可抗力その他やむを得ない事情があれば協議で中途解約できる、としました。クーリング・オフについては、通知の方法(書面又は記録可能な電子的方法)と返金の方法・期限、法人その他の事業者の契約には原則として適用されないことも規約に定めています。

規約では、利用者は請求書・納品書・作業完了報告書などの提示によって支払の義務を負い、サービスの提供又は提供の準備の完了が確認された時点で料金の債務が確定する、としました。現金払いのときは領収証を出します。支払の遅れを繰り返した利用者については、以後の契約の締結・継続を断る権利を事業者に残し、支払われた金銭は提供済みのサービスや発生済みの費用に充てることができ、過剰な入金を除き返金しない、という定めも置きました。消費者向けの規約での充当・不返還の定めは、クーリング・オフや消費者契約法との関係で、適用される場面を確かめておく必要があります。

作業員を守る禁止事項と、重大な通知の方法

同じ規約の禁止事項には次のものを並べ、確認されたときはサービスの中止・解除と損害賠償の請求ができる、としました。

  • 従業員・協力会社の作業員への暴言・威圧・脅迫・嫌がらせ
  • 作業の妨害、器物の損壊
  • 虚偽の情報の提供や、SNSなどでの誹謗中傷その他信用を損なう行為
  • 従業員への直接の勧誘・引抜き、業務上不適切な関係の形成
  • 法令・公序良俗に反する行為、反社会的勢力との関与

作業員が一人でお客様の家に入る業態ならではの条です。威圧的な言動を受けても、中止の根拠が規約になければ、作業員はその場を離れる判断をしにくくなります。裏面の約款でも、作業の妨害・不適切な指示、危険物の持込み・設備の無断の操作、従業員への威圧・嫌がらせを禁止事項にしています。

規約では、不可抗力(天災、感染症、行政の命令・要請、電力・通信の障害など)で履行が難しくなったときは責任を負わず、不可抗力を主張する側は遅滞なく相手に通知し、履行できない状態が一定日数以上続いたときはどちらからも解除でき、解除の時点までの提供分は協議で精算する、としました。

通知は、書面・電子メール・内容証明・電子契約サービスなど記録の残る方法で行い、解除・損害賠償の請求・是正の請求・料金の改定などの重大な通知は、書面又はこれに準ずる確定的な記録が残る方法に限り、口頭・LINE・電話・ファクスなどによるものは無効としました。民泊清掃の事業者どうしの契約で、日常の連絡と重要な通知を分け、連絡ツールで済ませてよい範囲を決めている(料金・追加料金)のと同じ考え方を、消費者向けにも当てはめたものです。LINEで「解約します」と送られてきたときの扱いは争いになりやすいので、規約の定めと実際の受付の運用をそろえておきます。

オーナーにも一般の家庭にも同じメニューを売るとき

新しく清掃の会社を立ち上げる依頼者は、サービス紹介資料で「ハウスクリーニングで培った専門技術」を強みにしていました。利用申込書では、ディープクリーニング、エアコンの洗浄、レンジフードの洗浄などを「別途お見積り」として通常の清掃と分け、自動食洗機の掃除やレンジフードの分解洗浄もオプションの扱いにしています。家主不在型の民泊の清掃を受ける契約では、ハウスクリーニングの推奨のメニューを、作業ごとの推奨の頻度の目安(年1回、半年に1回、数年に1回など)とともに参考の別紙に載せました。ヒヤリングで「別紙の料金表として記載(都度承認)」「対象外・別契約」「参考資料」の三択を示し、回答は参考資料でした。

同じ事業者が、オーナーには事業者向けの清掃の契約の別紙で、一般の家庭には消費者向けの規約で、同じメニューを売る構造になります。民泊のオーナーが自宅の清掃も頼むと、同じ人に二つの契約が並び、どちらが適用されるか分からなくなることがあるので、申込みの経路ごとに適用する書類を決めておきます。

よくあるご質問

ハウスクリーニングの訪問のときに追加の作業を勧めた場合、クーリング・オフの対象になりますか?

見積りや依頼された作業のために呼ばれた訪問で、依頼されていない別の作業を勧めて契約すると、訪問販売の規律がかかる方向に働きます。法定の書面を交付するか、追加の作業は後日の申込みに回すのが安全です。

作業が終わった後にクーリング・オフされたら、料金はもらえますか?

もらえません。訪問販売のクーリング・オフでは、役務を提供した後でも対価を請求できません(特定商取引法9条5項)。訪問販売に当たる場面では、書面の交付を確実に行います。

ハウスクリーニングのキャンセル料は、いくらまで設定できますか?

消費者との契約では、解除に伴う平均的な損害を超える部分が無効です(消費者契約法9条1項1号)。作業日の前日・当日・作業開始後と時期で段階を分け、根拠を説明できる額にします。

利用規約で賠償額の上限を決めても有効ですか?

消費者向けでは、上限の条項に「故意又は重大な過失による場合を除く」ことを明示しなければ無効になり得ます(消費者契約法8条3項)。全部の免除や、故意・重大な過失の場合の免除は無効です。

民泊オーナーからの依頼にも、クーリング・オフは適用されますか?

営業のために結ぶ契約には訪問販売の規定は適用されないので(特定商取引法26条1項1号)、届出・許可を得て事業を営むオーナーとの契約には通常かかりません。小規模な個人オーナーの場合は実態で分かれ得ます。

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